HOME > 連載コラム

中央テレビ編集 


<< 先月のコラムへ    トップへ    >> 次月のコラムへ

美術館からのエッセイ
美術館と学校教育との連携
 2024年12月まで開催していた「没後120年 エミール・ガレ展」には、たくさんの方にご来場いただきました。秋の遠足シーズンとも重なったため、大人の来場者のみなさんが団体鑑賞中の子どもたちに「かわいらしいなあ」「ちゃんと約束守って偉い」などと声をかける場面にもしばしば遭遇しました。
 徳島県立近代美術館では学校教育との連携事業に力を入れており、本コラムでも子どもたちとの作品鑑賞オンラインでの作品鑑賞の試みをご紹介してきました。
 今回は、当館の学校教育との連携事業について、最近の様子を交えながらお伝えします。「美術館ってこんな活動もしているんだ」と改めて知っていただく機会になれば幸いです。

■団体鑑賞
 遠足や授業での団体鑑賞の際、学芸員など当館職員が、学年や目的に応じた案内をしています。職員が一方的に話すのではなく、子どもたちが持っている力を使って鑑賞を楽しめるよう支援をしています。
 作品鑑賞のあと、表現活動をおこなうこともあります。たとえば「エミール・ガレ展」では、ガレの多彩な作品を鑑賞したあと、花瓶のデザインに挑戦してもらいました。


「エミール・ガレ展」を鑑賞したあと、デザイン画を描いている様子


 なお、教育活動等で観覧するときは、観覧料免除申請書の提出で観覧料が無料になります。詳しくは当館ウェブサイトの「学校のページ(https://art.bunmori.tokushima.jp/education/)」からご確認ください。

■出前授業
 当館職員が学校に出向く出前授業もおこなっています。授業の内容は様々ですが、美術館に来る前に作品に親しんでいる子どもたちは、実際に展示室を訪れると「この絵、見たことある!」と言ってくれます。愛着ある特別な存在として、作品が子どもたちの記憶に残ってくれたらと願っています。
 秋には、団体鑑賞で来館したこども園と、その近隣の高齢者施設等のみなさんと合同での出前授業も実施しました。当館所蔵作品であるアンリ・マティスの版画集〈ジャズ〉をよく観察して、切り紙絵を制作しました。子どもも大人も緊張気味でしたが、一緒に活動するうちに気持ちもほぐれ、先生方や職員の方々のあたたかい励ましもあって、充実した作品づくりとなりました。


出前授業での切り紙絵づくりの様子


■職場体験学習
 中学・高校生を対象とした職場体験学習も受け入れています。バックヤードや展示室の見学、資料や図書の整理、鑑賞プログラムの体験など、生徒のみなさんの関心にあわせて内容を構成しています。広報用の文章や写真撮影に取り組んでもらったり、実施予定のワークショップのモニターを務めてもらう場面もあり、それぞれの視点を活かして力を発揮してもらっています。


特別展「大久保英治:辺境の作家1973-2024」広報用写真撮影中の様子


■授業等への協力
 学校から授業のご相談があった際、教材や資料をご紹介することもあります。当館には「鑑賞シート」という図工や美術の授業で使うために作成している鑑賞教材があり、そちらを案内する場合も少なくありません。鑑賞シートは学校の先生、大学の研究者、学芸員がチームになって「鑑賞教育推進プロジェクト」という活動の中で研究・調査・相談しながら制作しています。学校の授業での使用を前提に指導の手引きと授業案も用意しており、リピーターとなってくださる先生方もいらっしゃいます。
 詳細は、「鑑賞シートのページ(https://art.bunmori.tokushima.jp/gakko/kansho_sheet.htm)」からご確認ください。

■教員研修
 上記のような事業のお話をしたり、先生方に体験いただいたり、その他の当館活動をわかりやすくお伝えするべく、市・郡の図工部会研修や校内研修に美術館職員が赴いたり、近代美術館で研修を実施していただいたりしています。また、美術館が主催する「先生のための美術館研修&交流プログラム ナイト・アート・ミュージアム研修会」も開催しています。


「ナイト・アート・ミュージアム研修会」の様子


■もう学校に通っていないみなさんへ
 さて、学校連携事業を色々ご紹介しても「今の子どもたちはいいな。自分はもう体験できないな」とがっかりさせてしまったかもしれません。しかし、学校連携事業は孤立した事業ではなく、他の美術館事業と大いにつながりを持っています。学校連携事業で得られた気づきや子どもたち・先生方の声は、美術館活動全体に生かされているのです。
 たとえば、展示室の入口で配布している展覧会ごとのワークシートは、各展覧会担当者が自らの専門性を活かすとともに、学校連携事業での経験を踏まえながら作っていると言えます。子ども向けセルフガイドとして配布していますが、大人のみなさんも是非お手に取ってみてください。
 また、2025年1月25日[土]からはじまる【特集展示】「Look@コラージュ」では、作品を鑑賞した後にコラージュ技法が体験できるコーナー「おためしコラージュ!」が設けられます。遠足で来館した子どもたちのような気分で、鑑賞と表現活動の両方を楽しんでいただければ嬉しいです。

(徳島県立近代美術館 主任学芸員 笠井 優)


徳島県立近代美術館1月の催し物

■所蔵作品展 2024 年度Ⅲ「 “Z”と呼ばれる時代 」開催中~ 2025年4月20日[日]

■特集展示「Look @ コラージュ」2025年1月25日[土]~2月16日[日]
【関連イベント】
・おためしコラージュ!
とき:特集展示「Look@コラージュ」の会期中
ところ:展示室3前ロビー(2階)
参加対象:どなたでも
申込不要、要観覧券。

・制作ワークショップ「つながるコラージュ!」
とき:2025年1月26日[日] 13時30分~15時30分
ところ:アトリエ2(近代美術館3階)  講師:近代美術館スタッフ
参加対象:どなたでも 料金:無料 
定員:10人程度。電話で申込。先着順で受け付けます。

■てみるの時間2024年度プレ事業「窓ガラスプロジェクト」(徳島県立二十一世紀館との共催)
展示部門:2025年1月28日[火](随時開始)~3月9日[日](休館日を除く)
パフォーマンス部門:2月23日[日・祝]
ところ:徳島県立近代美術館及び徳島県立二十一世紀館内 主な窓ガラス(計6会場)
観覧無料

*申込先はいずれも徳島県立近代美術館 TEL:088-668-1088
お電話にて、参加希望のイベント名とお名前、当日連絡先をお伝えのうえお申込みください。

※美術館ホームページもご参照ください。
https://art.bunmori.tokushima.jp/