中央テレビ編集
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自治随想
コロナ禍を契機にして ~その2、アフターコロナからSDGs未来都市姫路を目指して~ |
| 世界文化遺産・国宝姫路城で世界に知られる兵庫県姫路市は、2006年3月平成の大合併により人口約53万人を擁し近隣7市8町と形成した播磨圏域中枢都市圏の中心市として圏域をけん引する立場にある。私と昭和17年同年生まれで京都大(法)卒、04年8月4日没した堀川和洋市長(62歳)とは、徳島県警本部長や海部俊樹総理の警察庁派遣秘書官当時に親交があり、「今度また別の会で改めて会いましょう」と冗談のような挨拶を受けて、1995年 (平成7)姫路市市長として全国市長会で出合う。以後2期、 全国初の中核市への移行や警察関係を歴任した経験から暴走行為やそれを煽る行動を取り締まる防止条例を制定、またJR 山陽線の高架化、レンタサイクルやループバスの開業、キャスティ21 計画など駅周辺整備に力を入れた。2004年(平成16)7月1日姫路市名誉市民、同8月4日病死、その先人の自慢話や来し方を懐かしみながら姫路市を訪れた。 姫路市の象徴姫路城の礎は、羽柴秀吉 (後の豊臣秀吉) が毛利攻めのために姫路入りし、当時の城主黒田官兵衛から城を譲り受け三層の天守閣等の整備を行い、その後、 関ヶ原の戦いを経て徳川家康の側近・西国の将池田輝政が、播磨52万石・姫路藩主として入城、約8年かけて築き上げる。また、第2次世界大戦姫路大空襲時にも甚大な被害を受けるも姫路城は奇跡的に焼失を免れ戦後の復旧と高度成長を見守ってきた。 周辺市町村との合併により市域・人口を順次拡大し平成18年(2006)3月、家島町・夢前町・香寺町・ 安富町と平成の大合を行い現在に至っている。以下、清元秀康姫路市長の報告を参考にコロナパンデミック対応を見ていくこととする。 (1)新型コロナウイルス感染症の影響と対策 姫路市では市長をトップとした感染症対策及び緊急経済対策に係る本部を設置し、必要な対策を迅速かつ多段的に実施する。①市内の産院で出産を控えた妊婦とそのパートナーに唾液によるPCR 検査を実施、産院での感染予防と地域の周産期医療の維持確保を図り、誰もが安心して子供を産み育てられる体制を構築した。②在宅診療の実施と重症化予測に関する臨床研究への協力 (国立国際医療研究センター) を自治体全国初で実施する。③ひとり親世帯に対して地場産品を使用した食材等を定期的に配送し生活支援を行い、地元生産者・地元タクシー事業者への支援にも繋げる。④市民が 「姫路の飲食店を応援しよう!プロジェクト」に参加した市内飲食店の中から応援したい店を選び、当該飲食店の40%プレミアム付き応援チケットを先払いで購入することにより、緊急事態宣言下の休業要請等で経営に大きな影響を受けた飲食店の運転資金の確保と、地域の消費活性化を図る。⑤プレミアム付き商品券の発行。市内の参加店舗で使用できる期間限定の20%プレミアム付き商品券(姫路しらさぎ商品券)を発行し消費喚起による地域経済活性化を図る。 (2) コロナ禍を契機とした姫路市の取り組み ウイズコロナ・コロナ、ポストコロナ期における都市自治体の、活力維持・持続可能な発展を遂げるために、時代の変化に適合し、新たな視点に基づく施策の推進を図る。①「居心地が良く歩きたくなる姫路」プロジェクト。姫路市の象徴的な戦後復興事業として昭和30年(1955)完成したJR姫路駅から姫路城まで長さ830m、幅50mの大手前通りは、現在まで姫路市における中心市街地の街並み整備の礎であったが、近年ではJRの鉄道高架に伴う車道中心の駅前をゆとりある歩行者空間に再整備する、 姫路城の平成の大修理の完了に合わせた平成27年に駅前空間をトランジットモール化し、賑わいとうるおいのある駅前広場を完成させ、併せて令和 2年大手前通りの再整備を完了させる。更に配慮を重ね、①大手前通りの歩道部分を人が通行するための歩道から、「人が滞留し楽しむことができる魅力あるストリート」へ転換するため令和元年から沿道店舗や周辺事業者と連携して「大手前通り活用チャレンジ (ミチミチ)」 社会実験を実施する。歩道部にイベントやイートインなどにも活用できるウッド調のベンチを備えたくつろぎと憩いのペースを設置するなど様々な取組を広げる。②姫路市は大手前通りを全国初の「歩行者利便増進道路 (通称 : ほこみち)に指定、道路管理者である市が道路管理者として道路占用許可を柔軟に認められるようになり、歩道部分にカフェなど飲食施設や休憩スペース等の賑わい空間が生み出せるなど、民間事業者の創意工夫による空間づくりが可能となる。 (3)地域の医療体制の整備 市民一人ひとりがコロナ禍での教訓を生かして日々の生活を安心して送れるように、 医療提供体制や救命救急体制が欠かせない。①先ず高度医療提供体制の構築。感染症対応病床を含め736床を備える「(仮称)県立はりま姫路総合医療センター」を令和4年5月開院予定。兵庫県と連携し姫路市及び近隣市町の医療提供体制の充実を図ると共に、同センター敷地内に県・市と連携・協力して学校法人獨協学園が設置する医療系高等教育・研究機構において、公衆衛生や医療従事者の研修に関する研究・教育などを行うとする。②医療情報連携システムの導入。効率的かつ質の高い医療を提供する体制を構築するため、ICTを活用した医療情報連携について、関係機関と協議・検討を行うと共に、市内医療機関において、PHR(個人健康記録)を活用した実証実験を予定している。③救急搬送支援システムの構築。救急時の搬送困難症例等の解消や病院到着時間の短縮に向け、救急隊と医療機関がリアルタイムで情報を共有する「救急搬送支援システム」を、同一医療圏内の市町と連携し、本格稼働を目指す。 (4)ニューノーマルへの対応 デジタル化を加速させ、行政サービスにとどまらず全市的なDX(デジタルトランスフォーメーション)に向けた取り組みを推進する。また、2050年カーボンニュートラル(CO₂実質排出ゼロ)に向けた「グリーン化」や、SDGsの視点を踏まえ、ニューノーマルに対応したさまざまな分野における都市の成長戦略を展開するとする。そのために、 ①デジタル化の加速を期して専門的な知見を有する高度デジタル人材を 「デジタル・マネージャー」として、民間企業から登用し、市のDX推進主体となる「デジタル室」を設置し、市役所業務の自動化や電子化にとどまらず、市民生活や経済界も含めた全市的なDXに向けた取り組みを戦略的に進めるという。また、社会全体におけるDXの基盤整備を目的として民間企業のデジタル化を支援するとともに、スマートフォン講座の開催などシニア層を中心とした市民のデジタル・ディバイド(情報格差) 対策に取り組む。さらに、国から認定を受けたマイナンバーカードを活用した自治体ポイント制度導入に向けた実証実験を行うほか、公共施設へのキャッシュレス決済・オンライン決済の導入拡大にも取り組んでいる。 ②ゼロカーボンシティ宣言。姫路市は令和3年2月22日、2050年までに二酸化炭素の実質排出ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ」を宣言し、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを始める。直ちに4月から民間事業者による市内初の水素ステーションの操業開始、西日本初となる燃料電池バスも導入される。これらの支援のために民間事業者向けのFCV(燃料電池自動車)への助成を拡充し、あらたにタクシー事業者への助成も開始する。更に、市役所から排出される温室効果ガス削減のため公共施設の照明のLED化、再生可能エネルギー設備の導入、公用車の一部にFCV導入するなど脱炭素化に向けた率先的な取り組みを進める。③姫路市SDGs未来都市の推進。 本年5月、内閣府の「SDGs 未来都市に選定された。これを機に、ポーランド共和国の古都クラクフ市との連携を視野に入れて、 郷土愛をはぐくみ脱炭素型のライフスタイルを身につけたSDGs マインドを持つ次世代を育成し、若者が姫路市で持続可能な社会を担い、日本と海外を繋ぐ架け橋を目指す。 「不易流行」、コロナ禍の教訓を生かし希望に満ちた明るい未来の創造に向けて全力で取り組むことが、現在を生きる我々に課せられた使命となろう。コロナ禍を契機とした新たな視点に基づく取り組みを通じて、市民生活の利便性や社会経済活動の生産性を向上させ様々の分野における都市の活力を維持し、持続可能な発展を目指すとともに、時代や社会情勢に柔軟に対応できる、多様な価値観と強くしなやかな社会構造を併せ持つ都市を構築したいとする。 完成した大手前通り再整備事業完了後賑わい空間を散策しながら感慨を新たにした。 (徳島文理大学総合政策学研究科教授 西川 政善) |