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中央テレビ編集 


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IT、ICT、AI な話

◆こんなセミナーを受任しました。

 円安、物価高騰の話題に事欠かない日常です。中小企業施策での緊急課題として、価格転嫁が挙げられることが多いものです。具体的なセミナー内容のエントリ情報は下記のチラシを参照下さい。良ければ、ご参加下さい。


◆資本主義社会で自由競争とは?独占禁止法とは?下請代金支払遅延等防止法とは?

 現在の資本主義経済社会を前提とすれば、効率化を追求すれば資本は集中・集積するのは歴史の必然なのです。その結果、大資本の市場支配力は増大します。そこに見えてくる経済社会は、大資本による小資本の収奪と勤労大衆の搾取が混在した格差社会なのです。富は偏在し、小規模事業者、勤労大衆は相対的貧困化が進行するのです。単純に考えて、大資本は、価値を実現するべき市場を自ら浸食、崩壊させるということです。大資本は市場を求めて国民経済を見捨てて海外進出を行います。これが帝国主義と呼ばれる現象です。帝国主義の行きつく所は世界大戦なのです。
*(このような議論は昭和中期の遺産です。但し、一定の客観性・説得力も持ってます。)

 ここで、大資本の横暴を抑えて、小資本を育成することの意義が謳われることとなります。独占禁止法の領域です。独占禁止法(Antimonopoly Act)は、欧米の競争法を参考にして制定されました。特に、アメリカ合衆国のシャーマン法(1890年)やクレイトン法(1914年)、欧州連合の競争法がモデルとされています。
 アメリカのシャーマン法は、私的独占や不当な取引制限を禁止する世界初の競争法で、日本の独占禁止法にも大きな影響を与えました。第二次世界大戦後、日本が民主化と経済改革を進める過程で、アメリカが主導して日本に競争法を導入しました。これが1947年に独占禁止法として成立しました。日本独占禁止法の特徴としては
・市場の公正な競争: 企業間の公正な競争を促進し、消費者の利益を保護することを目的としています。
・公正取引委員会(JFTC): 独立した規制機関として、競争法の執行と違反行為の監視を行っています。
・独占禁止法は、欧米の競争法を基にしながらも、日本の経済構造や市場環境に合わせて独自の発展を遂げてきました。 が挙げられています。その上で、中小企業向けに下請代金支払等遅延防止法(下請法)が制定されています。
下請代金支払等遅延防止法(下請法)は、独占禁止法の特別法です。
下請法の概要と独占禁止法との関係についてまとめてみます。
 ★下請法(下請代金支払等遅延防止法):
主に中小企業や下請事業者を保護するために、親事業者による不当な代金の支払遅延や減額などを防止することを目的としています。 1956年に制定され、取引条件の公正を保ち、下請事業者の利益を守るための規制を行っています。
 ★独占禁止法の特別法としての位置づけ:
 独占禁止法は、広範囲にわたる企業の不公正な取引方法や市場支配を防ぐための基本法です。下請法は、特に下請取引に焦点を当てた規制を行い、独占禁止法の目的をより具体的に達成するための補完的な役割を果たしています。独占禁止法の規制対象には含まれない、下請取引の詳細な規制を行うことで、下請事業者の保護を強化しています。
 ★具体的な規制内容
 代金の支払期日:
 親事業者は、下請事業者に対して代金を遅滞なく支払わなければならない。
 不当な減額・返品の禁止:
 不当な理由での代金の減額や返品を禁止し、下請事業者の利益を守る。
 運用と執行
 公正取引委員会(JFTC)と中小企業庁が共同で下請法の運用を担当し、違反行為に対して是正を求める活動を行っています。
 下請法は、独占禁止法と連携しながら、下請事業者を保護し、公正な取引関係の維持を図る重要な法律です。

◆今回のセミナーの基本スタンス

 前置きが長くなりました。このセミナーは中小企業施策の一環として行われるものですが、単に知識補充的に捉えるのでなく、体系的・発展的に考えたいものです。主に三本柱として整理を行います。
① ;価格転嫁は、社会政策ではなく経済政策です。
 資本力の弱体な企業の救済措置ではありません。自由な市場競争を促すことが社会の発展、国民経済の基盤強化となることを理解しましょう。
② ;交渉は情緒的なものではなく、合理的で説得力がなければなりません。
 資料作成能力を持ちましょう。理念は抽象的ですが、実際の交渉の現場においては、説得力のある各種の資料作成が必須となります。場合によりAIの手助けなども必要となるでしょう。実践力を培いましょう。 この分野がセミナーの中心テーマとなります。
③ ;顧客価値創造経営   
 実際のセミナーは、②の作業手順の説明と習得を目的とするものですが、その場凌ぎの技術論だけでなく、経営基本、理念の観点が必要となります。具体的には、価格交渉ハンドブック、価格交渉準備編CHECK6,7に示されていることです。つまり、事業は、顧客の企業価値創造を目的とした活動を日常的に行っていくべきということです。  

 セミナーテキストは、価格交渉ハンドブック(下記)を利用して行います。
 https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/pamflet/kakaku_kosho_handbook.pdf
 上記の3ポイントをテーマとしたセミナーとなります。成果としては②の具体的な作業力の向上となります。事前に読み込んでいただきたいとも思いますが、受講後でも問題ありません。


 次図は、経営品質協議会版の「顧客価値創造ガイドライン」よりの引用です。価格交渉という実践領域と経営の設計図との関連を示すものです。これらを意識しつつコンサル活動を続けたいと思っております。宜しくお願いします。