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中央テレビ編集 


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IT、ICT、AI な話

◆「人を大切にする経営」の前提について触れてみましょう。

 昨年より、このコラムの歴年のテーマである「人間論」の発展系である「人を大切にする経営」をテーマにすることが多くなっています。
 人間論といえば、場合により宗教、思想、信条、道徳などが切り口となることが多いものです。結果、抽象的な論議となってしまします。ややもすれば不毛の観念論の応酬、禅問答の様相を見せることになりがちです。そんな時に有効なのが、IT化の考え方とスキームであると思っております。情報共有化は組織の3要素の一つです。議論の冗長度を避けるためにもそれらの手法の推進(コンサル)が必要だと思っております。次図は各種のセミナーで活用している図式です。「近未来の主たる競争要因」として顧客との関連性(エンゲージメント)を高めることが重要だという主張を掲げています。結果、人は幸せになれるということなのです。



 それらの議論の前提となっている議論を紹介します。丸山真男さんの論議です。過去、私が講演などで言及した理論が網羅されている書物を紹介します。1961年の出版ですから、60年前の著作なんです。



 どんな論議を活用するのでしょうか?この書籍は、4節より成立しています。前半の2節は学術論文。後半2節は講演記録です。ここで紹介するのは後半部分です。分かり易く説得力があると思っています。

① ササラ 型 とタコツボ型、近代的組織体のタコツボ 化
日本の社会の閉鎖性と危うさが論議されます。イメージとしては次図を参照下さい。開かれたササラ型の組織ではなく、閉鎖的で暴走しがちな日本型組織の特徴を捉えています。私の主張としては、タコツボ文化打破の手段をITに求めたいということなのです。



② 「 で ある」ことと「 する」 こと   
 「 で ある」社会とは、構成員の人々が前もって類型化されている社会です。封建制、身分制を思い出して下さい。そこでは、人々の行動が事前に予想され複雑な論議は必要ありません。むしろ論議なしに行動できることが美徳ともなります。「忖度する」という言葉が浮かんできます。窮屈な社会だという認識を持っています。
 それに対して「 する」社会とは何を表現しているのでしょうか?封建制、身分制の残存した社会と離れた近代的自主行動を表現していると思っています。構成員の流動性も高く、アカの他人のような人々との交流も必要となる社会です。広範な知識、交流術などが処世の必須条件となるでしょう。結果、「 で ある」社会に慣れた人々には強いストレスがかかることは避けられないことでしょう。これらの葛藤が近代日本の特徴だというのが丸山理論という理解をしております。

◆ 「人を大切にする経営」について考えてみました。

 私自身、経営コンサルとしては「 で ある」社会ではなく「 する」社会を目指した合理的なコンサル行動を行ってきたつもりです。家族主義を謳う日本的経営とは「で ある」経営の非合理主義として切り捨てしてきたのです。しかしながら、一定の齢も越え、やや考え方も変わってきました。その契機となった著作を紹介します。



 新しい日本型経営、大家族主義経営、人間性尊重型を謳った経営論です。「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」受賞、徳島県の西精工(株)の経営手法をテーマとした書籍です。数年前までであれば、「で ある」型、タコツボ型の経営論として見過ごしていたことでしょう。
 共著者の天外伺郎氏によれば、家族主義経営には
 ・家父長型大家族主義経営
 ・人間性尊重型大家族主義
の2種類に分けられるということです。かつては資本主義の諸問題の解決策として労働運動、社会主義・共産主義が語られた頃もありました。そんな時代は過去のものになりました。日本型経営が、新しい局面を見せ、日本社会の生産性向上に寄与し、新しいフェーズを見せてくれることに期待したいと思っております。今後の動向に期待して下さい。宜しくお願いします。