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中央テレビ編集 


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Dr.板東のメディカルリサーチ No.239
<習うより 慣れて楽しむ 習慣を>

 2025年のノーベル賞に、生理学・医学賞の坂口志文氏、化学賞に北川進氏が選ばれた。なんとも快挙だ、素晴らしい!さらに京都府特別栄誉賞を授与と発表。府知事は「京都の学術研究レベルの高さを世界に示せた。若手研究者らの励みにもなる」と称えた。長年地道に努力を積み重ねたご苦労や日々の心がけの大切さを示されたお二人に畏敬の念を禁じ得ない。

★日々ライフ 生活習慣 人生に
 自分の生命(life)をうまく管理し、日々の生活(life)を充実させて生き (live)、数十年間積み重ねると、各自の人生(life)に繋がっていく。これがQuality of Life(QOL)である。ここで、生まれ持った才能や性質は
「第一の天性(First nature)」と、努力を重ねて身につけた習慣によって得られる後天的な能力や性質は「第二の天性(Second nature)」と呼ばれる。古代ギリシアの哲学者・ソクラテスの孫弟子にあたるディオゲネスは「習慣は第二の天性なり」(Habit is second nature)と述べた。生まれ持った才能がなくても良い習慣を続ければ、その才能を超えられる前向きな姿勢も含まれる。  
 私の師匠・国際聖路加病院の日野原重明先生は、1978年に
「習慣病」という言葉を提唱し、1990年代に当時の厚生省が我が国で使う用語に定めた。様々な病気は、先天的で遺伝的な因子と、後天的で生活習慣の因子が関わる。当然ながら、後者の食事や運動、休養、酒、喫煙など習慣が大きく影響するものだ。あなたは毎日、何かを目標として生きているだろうか?

★運動を 続けるだけが 効果あり
 スポーツや音楽、芸術、文化の分野では、
「習うより慣れろ」というフレーズがよく用いられる。英語では”Practice makes perfect” (練習が完璧を作る、継続は力なり)や、”Custom makes all things easy”(習慣が全てを容易にする)に相当する。結局、各人が脳で考えて、その行動を日々、心身で実践していくと、再び脳が刺激されて、良い循環が続いていく。
 医学国際雑誌で証明されたことがある。アンチエイジングで間違いなく効果的なのは、薬などではなく、日々の生活習慣で
「運動を継続すること」だけとされる。身体を動かすことで脳機能が若く保たれ、心身の健康や幸福感(Well-being)に繋がっていくと解明されている。

★悩んだり 迷う経験 楽しもう
 「脳」という漢字で、偏の「月(にくづき)」を「忄(りっしんべん)」に代えると「悩」に。「人生に悩み、迷う」人がいるが、この違いとは? 悩むとは何を考えたらよいかわからず、答えがみつからないこと。一方、迷うとは、例えば寿司かステーキ、ピザ、ハンバーガーなど選べないこと。悶々と心が乱れるときには、心と身体は互いに密接に関連し(心身相関)、自律神経・内分泌・免疫系に影響を及ぼす。そんなときには、まず運動で身体を刺激すると、心の健康も保たれる。その後、脳を使って考えてはいかがだろうか。
(板東浩、医学博士、糖尿病専門医)


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