◆エリートアカデミー
昨年リオのオリンピック(2016)が終わり、あと3年でやってくるのが東京五輪(2020)。そのときに活躍が期待される日本の若い世代のアスリート達の育成が注目されている。
先日のニュースをご存知だろうか。日本オリンピック委員会(JOC)によるエリートアカデミーで、英才教育を受けてきた中高校生が修了式に臨んだという。名前の通り、素質がある優秀な若い選手を、9年前から各競技団体と協力しながら、育ててきたプログラムである。種目として、レスリングや卓球、フェンシング、水泳の飛び込み、それにライフル射撃が含まれ、37人が在籍しているそうだ。
この中で、注目されているのが水泳の飛び込みの金戸華選手(18)。なんと、祖父母も両親もオリンピアンというサラブレッドの家柄らしい。アジア選手権で金メダルを獲得し、4月には日本大学に入り、今後数年間でどれほど伸びていくのかが楽しみである。
◆日本体育協会
日本体育協会は、我が国におけるスポーツで、基盤づくりと時代に応じた展開を担ってきた。文部科学省やスポーツ省、日本スポーツ振興センター、中央競技団体などに加えて、JOCにも深く関わってきた。長年日本の国民体育大会(国体、National Sports
Festival)は数万人が参加する世界最大のスポーツの祭典である。
いわゆるスポーツドクターには①日本体育協会(日体協)、②日本医師会、③整形外科関連と3種がみられる。中でも、①は誰もが希望すれば取得できるものではない。つまり、申請するまでに、都道府県や中央競技団体における様々な活動を通じて、信頼を得た医師が推薦を受けて受講資格が得られる。私は、日本ローラースポーツ連盟(日ロ連)推薦により、スポーツドクター①資格を取得し、いろいろな世話役も担当してきた。
日体協は年に一度、スポーツドクターの会議を行っている。各都道府県から約50名、各競技団体から約50名が参集する。私は日ロ連代表として、今まで一度も欠かさず参加。今回は徳島県担当者が出席できず、代わりに私が徳島県体育協会・医科学委員会副委員長としても出席した。
図1 図2
◆ドーピングの問題
その会議では毎年、世界のスポーツ医学の最新情報のレクチャーがあり、いつも楽しみにしている。このたび、ドーピングの話題がみられたので紹介したい。リオ五輪の前に、ロシア陸連のドーピング問題が明らかになり、多大な影響がみられた。いろんなリサーチによって、世界中でドーピング問題がみられる競技種目の統計を示す(図1)。多い順番に、陸上、ボディビル、自転車、重量挙げ、パワーリフティング、フットボール、レスリングと続く。また、近年はステロイド薬の使用ではなく、自分の血液を保存しておき、試合前に再注入する方法がみられる。この際、ヒトの赤血球の量(ヘモグロビン、Hgb)は常に変動がみられるが、統計学的にある範囲内になることがわかっている。もし、予測範囲以上に変動すれば、何か人為的な操作があったと判断できる(図2)。
今後の問題点として、日本人は従来ドーピング問題に無縁と思われてきたがそうではない。意図的ではなく、うっかり風邪薬などを服用するうっかりドーピングや、インターネットで入手した製造元が怪しいビタミン薬や薬剤などによる違反が報告されている。今後、国や日体協、各種団体、各アスリートに、グローバルスタンダードに沿って注意深く対応してほしいと願い、東京五輪における展開や活躍を祈っている。
(板東浩、医学博士、ピアニスト、https://www.pianomed.org/)
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