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中央テレビ編集 


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Dr.板東のメディカルリサーチ No.234
<各分野 世界を変える トップ100>

 米の有力誌「TIME」に、「世界に影響を及ぼす100人」の特集があった。世界地図(A)に各人の出身地を示す。欧州が中央に、日本が東の果て(極東)に位置し、南半球よりも北半球に偉人が多いようだ。この地図で気づいたことがある。グローバルな歴史や芸術文化の経緯から、本図法が採用されたのかもしれない。

<地球儀の 球面表す 平面で>
 地図には世界の政治や歴史、芸術文化が関わる。戦前、文化交流の中心はパリだった。その後、1930-40年台に欧州の芸術家たちは創作活動を続けるためアメリカへ。新天地で躍動的なコミュニティーを形成し、文化的融合が進展した。現代の特徴はグローバリゼーションだ。異なる文化同士が交差して生まれる芸術には、多文化主義が反映している。  
 以前、米国で使われている地図
(B)をみて驚いた。北米南米の大陸を中央に配置し、アジアを左端と右端に分割している。その意図は、米国を世界の中心と据えさせ、無意識のレベルでも、国民の地理的認識や意識を形成させていくためだろう。  
 地球儀の球面を平面で表すため、バックミンスター・フラーが考案した「ダイマクシオン・マップ」
(C)がある。正二十面体に投影し、展開して平面上に配置可能。陸地の連続性を保ち、歪みを最小限に抑えた優れたアイデアだ。

<日本から 選出されし 芸術家>
 今回100名中、日本から3氏が選ばれた。真田広之氏は、ハリウッド製作の時代劇「SHOGUN将軍」で、エミー賞を史上最多18部門で受賞。「時代劇に携わってきた人々に敬意を表した上で、『あなた方から受け継いだ情熱と夢は海を渡り、国境を超えた』」とのコメントは感動的だった。氏は「Scene stealer(場面を盗む人)」と紹介。個性や存在感が圧倒的で、観客の注目をさらってしまうという意味合いだ。日本語なら「全部持っていった」となるだろう。
 次に、現代美術家の奈良美智(なら・よしとも)氏は、「溢れんばかりの創造性」と紹介された。子供の頃、自分でラジオを作り、米国の極東放送網(Far East Network, FEN)を聴きこみ、フォークやロックに傾倒。国立デュッセルドルフ芸術アカデミー等で研鑽を積み、大きな目の少女を描いた作品などが知られる。彼の作品には「音とビジュアルとのコラボが内在している」と評価されてきた。
 最後に、Yoshiki は「マエストロ」と称された。ロックバンドX JAPANのリーダーで、ピアニストや音楽プロデューサー、実業家、慈善家などで有名だ。文化大使として常に新たな境地を切り開きつつ、時代を超えたインスピレーションを有する芸術性や慈善活動など、社会的な影響力が高く評価された。
  このたびTIME誌の記事に触れて興味深い世界地図を思い出し、若干記載した。また、グローバルスタンダードの尺度で選出された素晴らしい3氏についても解説させて頂いた。それぞれの道を究めてこられた経緯や、信念を貫き通し続けた姿勢に感服した次第である。
(板東浩、医学博士、糖尿病専門医)


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