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中央テレビ編集 


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Dr.板東のメディカルリサーチ No.233
<情熱の 連鎖で誕生 初音ミク>

 先日、TVの「新プロジェクトX」で、「情熱の連鎖が生んだ音楽革命〜初音ミク 誕生秘話〜」を見た。VOCALOID技術を使った音声合成ソフトで誰もが作詞作曲でき、ミクが歌い踊ってくれる。日本で次世代の音楽文化が展開し、徳島出身の米津玄師やADO、Ayase (YOASOBI)などのアーティストが育ち、国際的にも活躍している。概要は知っていたが、楽器メーカーと小さなベンチャー企業の技術者たちの真摯な気持ちと努力に驚いた。一つ違えば、どこかの大企業が権限も利益も独占していたかも。しかし、皆の共有財産、あるいは文化の宝となった。今や、世界中の小さなクリエーター誰もが各アイデアを駆使し斬新な表現を発信できるのは素晴らしい。

<カラオケは 利他で文化を 醸成し>
 ここで思い出したのが、わが国のカラオケの発祥と経緯だ。日本各地で多様なカラオケ機器が誕生し広まった。しかし、自分の会社だけが特許を取得して独占するなどの発想は全くなく、老若男女が自由に音楽文化を楽しめた。これは日本人の民度の高さ、そして「利己」ではなく「利他」の精神によるものだろう。経済的に勝ち組を目指す価値観ではなく、皆の幸福や楽しみに貢献したいと思う。同様のことが、経済界において、松下幸之助氏の精神性にも学ぶことができる。

<身体の 感覚プラス 感情へ>
 心身医学的にも、人間同士の関係性はとても重要だ。心と身体は常に一体で「心身一如」という。いま注目されている「身体感覚マッピング(Bodily Sensation Maps, BSMs)」という感情評価ツールを紹介したい。心理学者プルチック氏の説で、人が有する基本感情8個と(内側)、各二点を組み合わせた8つの応用感情(外側)がある。内側でpositive(P)な因子は2つ、negative(N)な因子は4つあり、喜び+信頼=愛、恐れ+驚き=畏怖、怒り+予測=攻撃となることに。右図は二重円だが、研究によると四重~七重円で示される発展型もみられ、奥深い意味合いや概念があるようだ。

<日本語に 自然も人も 交流も>  
 日本人は漢字や仮名、アルファベット、外国語などを常に使っているため、大脳が広範囲に働くらしい。気候や風景に微妙な人の心情などを込められる。日本語では「雨」の言葉が多数あるが、英語ではrainだけ。人は自然の中に存在し、人間同士の交流や歴史など、あらゆる因子が混在する。常にアナログ的で多次元な視点と感覚が融合できる。
 一方、欧米ではデジタル表現で、1か0か、YesかNoかを明確化し、多項目を組み合わせ検討する。たとえば、音楽に対する西洋人と東洋人の反応の差異も図示されている。様々な研究の発展を期待したい。
(板東浩、医学博士、糖尿病専門医)


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