2023年、グテーレス国連事務総長が「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰の時代が到来した」とコメント。気候変動による最悪の事態の回避を訴えた。過日、米国で森 林火災が長く続き衝撃を受けたが、日本でも同様の火災が発生し驚くばかりだ。ここで思い出したのが、かつて日本で安定した気候と、出張で各国で経験した気象や気候、天候である。
<朝暖房 昼は快適 午後冷房>

日本には梅雨も含めて5つの季節がある。この湿度が特徴であり、バッファー(緩衝)機能により気温の変化は少ない。緩衝機能は人にも備わり、どんな環境でも内部環境はほぼ一定を保つ(ホメオスタシス)。
1980年代に米国で体験したのが、朝は寒く、車に乗るとすぐに暖房。昼は気持ちよく過ごすが、午後の3時が最高気温となり、冷房が必要に。乾燥地域の気候を興味深く感じたことがある。
<欧米は 季節の推移 急激に>
1990年代、フランスのニースで開催された学会に参加。紺碧の海岸(コートダジュール, Côte d’Azur)と知られる保養地である。18世紀当初には避寒地として発展し、今では夏の避暑地として人気がある。数千人規模の集会が8月下旬に行われた。初夏から多数のバカンス客で満室だが、8月20日から部屋はガラガラ状態。当時、7日間で気温が7度下がったためという 。せっかくなので地中海で泳いでみた。冷水には強い私だが、5分で体が冷えて諦めた思い出が懐かしい。
<いま晴天 急にスコール すぐカラリ>
2000年代、医療視察で東南アジア数か国での経験。晴天だったのが、急にスコール(Squall)となり土砂降りに。しかし、15~30分でカラッと晴れる。日本の夕立とは全く異なり、強い日射で急速に発達した積乱雲(入道雲)による。近年では、日本でも予想し難い線状降水帯やゲリ ラ豪雨が頻発しており、将来がやや不安に思う。
<昼食べず 夜はたらふく ラマダンで>
2010年代、中東を訪れた際、昼間の気温は49度にもなり、道路を歩くと顔が痛い。ちょうどラマダンの時期だった。旅行者は、外食せずにホテルの中なら普通に食事できる。しかし、地元の人は太陽が出ている時間帯は、飲食はダメ。驚いたのは日没後だ。家族や友人らと宴会を始め、牛飲馬食の状態に。こんなライフスタイルは生活習慣病を悪化させるのでは、と心配になるほど。彼らが身に着けるのはひらひらのカンドゥーラやアバヤで、楽なので肥満傾向に。実際に肥満や糖尿病の頻度はとても高い。でも、この気候にはこの衣装が快適で必要なのだろう。
<芳醇な 瑞穂の国が いま二季へ>
再エネルギー開発の加速。消費から循環型社会への転換が急務である。このままでは、日本は芳醇で五季がある瑞穂の国から、夏と冬の二季の国になるかもしれない。
(板東浩、医学博士、糖尿病専門医)
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