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中央テレビ編集 


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Dr.板東のメディカルリサーチ No.230
<AIの存在 世界を 変えていく>

 いまAI の応用が広がり、ChatGPTやCopilot、Gemini、DeepSeekなど誰もが利用できる時代になった。私も少し使ってみたが、あれほど短時間に必要な情報をうまく纏められる能力は確かに凄い。文章だけではなく画像作成も秀逸だ。各分野の専門家が長年努力して到達したレベルに匹敵するように思われる。ただ、我々の職業や仕事が今後どうなるのか、様々な懸念が広がってきている。

<進化する 医療はディープ ラーニング>
 
職業や職務、仕事などの言葉は似ているが、若干意味合いは異なる。英語で比較するとわかりやすい。ジョブ(job)とは職務や職業を指し、具体的な仕事のこと。ワーク(work)は一般的な労働や作業で日常業務やプロジェクトの仕事を示す。プロフェッション(profession)とは専門的なスキルや知識を必要とする職業を表す。
 これらを各人に当てはめ、数十年後、仕事の将来を推測できるだろうか? ここで、医療業界の例を紹介する。がん検診で画像を読む職務(task)があり、経験豊かな健診医が自身の目で読影してきた。一方、AIの目は1ミリより遥かに細かな病変も捉え、24時間フル稼働しても全く疲れない。数十万件の関連画像を深層学習して(Deep learning)診断するため、人間が追いつくのは難しい。

<仕事への 価値と人生 認識し>
 仕事に対する価値観が変化してきた。40年前の私の体験を紹介する。米国で臨床研修していた時期、カメラ店に立ち寄った。単に腕時計の電池交換だが、店員は両手でうまくピンセットを使えず、5分以上トライしても無理。結局私が簡単に入れ替えると、10ドルの電池代をサービスするよと。また、カメラの備品について何度尋ねてもないと言う。カタログには大きく載っているが、調べもせずに言い張る。
 なぜこんな状況なのか、少し調べてみた。20人店員がいても有資格者は僅か3人。他のスタッフは、時間給が高いため転職してきたらしい。仕事内容を覚えよう、勉強しよう、極めようなど、仕事に対する誇りはなさそうだ。8時間そこに居て給料が貰えればよい。近々日本でも同様のことが起こるのではと心配したが、予想はやや当たっているようだ。

<将来の 仕事に込める プロ意識>
 以前、日本人の仕事に対する真摯な姿勢は高く評価されていた。ところが、近年働く意識に対する国際比較調査で、残念ながら日本の順位は低い。日本はやりがいやプロフェッショナル意識が低く、「仕事とスキルの明確化によるキャリア自律の促進」が、経済界から求められている。
 携帯電話は30年前、一握りの人しか使っていなかった。今や情報通信技術(ICT)の普及やAIの発展で、今後驚くべき変革が到来するのは間違いなさそうだ。我々の生活や健康保持、人生設計はどんな方向に進むのか? 我々の仕事が今後、残るのか、消失するのか、それとも新しい職業が生まれるのか? 将来の予測は、誰にもできないかもしれない。
(板東浩、医学博士、糖尿病専門医)

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