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中央テレビ編集 


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Dr.板東のメディカルリサーチ No.229
<健康へ アスクレピオスの 杖パワー>

 新年おめでとう。平成7年の干支(えと)は「乙巳(きのと・み)」で、60年周期の中で「努力を重ね、物事を安定させていく」意味があるという。今回は乙巳にまつわる話題に触れたい。

<乙巳の 漢字の由来 運気上げ>
 
漢字「乙」はジグザグなものを表し、種から出た芽が地上に出ようとして曲がりくねった状態を示す(図1)。読み方はきのと(木の弟)で、植物が成長し柔軟性や協調性とともに目標へ進んでいく力を意味する。漢字「巳」は胎児または蛇の姿に由来し、訓読みの「み」は蛇の古語「へみ」による。古来より豊穣や金運を司る神様として祀られてきた。表面が傷ついても、脱皮すると傷のない姿に戻るため、再生と治癒、医療のシンボルに。運気を上げる縁起物としては定番で、蛇皮の財布や、蛇の抜け殻を財布に入れて持ち歩くと金運が上がるという。

<夢治療 アスクレピオスが シンボルに>
 紀元前5~後3世紀頃、人々に広く信仰されていたのが、ギリシャ神話における
医神・名医アスクレピオスであった(図2)。医学医術のすべてを学び、死者を蘇えらせることもでき、その術は蛇の脱皮からヒントを得たとされる。様々な病人は聖地を訪ね、お告げがあった人は夜寝椅子(クリネー)で眠り、夢に医神(蛇か犬のことも)が現れ患部に触れるだけで完治したらしい。後になって天空の「へび座とへび使い座」となり(図3)、持っていた杖に1~2匹の蛇が絡むことに。アスクレピオスの杖(蛇杖)は「医学のシンボル」として知られる。なおクリネーが現在のクリニックという言葉に派生してきた。

<蛇の毒 最新薬で 人助け>
 蛇に噛まれると命に関わるが、逆に毒が毒を制して疾病が治ることも。あなたは、毒蛇を酒に漬ける「蛇酒」を飲んだことはあるだろうか。物事の二面性について、医学には生と死や病気と健康があり、ヘビには毒があるが薬にもなることも。実際に蛇毒から血栓の分解や癌細胞の増殖抑制など新薬が開発されてきた。
 蛇は人々の健康に貢献してきた。
蛇杖のロゴ世界保健機関(WHO)や日本医師会(JMA)、米国医師会(AMA)など、多くの医学系組織で使われている(図4~6)。その中で救急車にみられるロゴ(DRROCT)には6つの意味が含まれる(図7)。皆さま方にご理解頂き、今年2025年には救急を含む医療と医学が、人々にWell-being(健康、幸せ)をもたらすように祈りたいと思う。
(板東浩、医学博士、糖尿病専門医)

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