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中央テレビ編集 


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Dr.板東のメディカルリサーチ No.225
<パワフルな 蒸気機関車 参考に>

 パリオリンピックからパラリンピックへ。各選手の素晴らしい活躍の数々に感動。日本が得たメダル数は多く、乗馬のメダリスト「初老ジャパン」はお洒落で馬力があった。競技者は 勝つため体力づくりを、一般人は健やかな毎日のため健康づくりを目指す。

<ロコモとは 蒸気機関車 SLだ>
 かつて時代を牽引しパワフルだった蒸気機関車はSteam Locomotive(SL)と呼ぶ。同じ用語が中高年者のロコモティブ症候群に使われてきた。本来ロコモは移動能力を意味し、足腰の筋力が弱り介護が必要な高リスクの状態を示す。我が国でロコモは約750万人みられ、認知症や骨粗しょう症とも関連する。結局、活動低下→運動不足→筋力低下→関節の障害と悪循環で、負のスパイラルに陥っていく。

<高年の ロコモがまさか 若年に>
 今回、国際的学術誌に驚くべき報告が出た。日本の大学生を調べると、20.8%がロコモに該当したという(413例、BMC誌)。特にロコモの人は片脚立ち(5秒以上)や位相角(骨格筋の質を示す新指標)に差異がみられた。男性は片脚立ち、女性は体脂肪率、骨格筋量指数(SMI)、握力が関連していた。
 いままで体重指数(BMI)が使われてきたが、柔道やラグビー選手などは筋肉量が多いため評価が難しい。近年は筋肉量(SMI)が使われ、位相角は私も研究を進め英文報告もしている指標であり興味深い。男性ではバランス能力を高め、女性では体幹の筋肉の強化が推奨される。従来ロコモは中高年が対象だったが、今後若年層も重要だろう。現代の若年者は運動習慣がなく、若年期よりロコモ予防や健康寿命を延伸させる方策を考えねばならない。

<エネルギー 効率考え ママチャリを>
 SLは石炭を燃やし熱エネルギーで水を蒸気に変えて、そのパワーで車輪を動かす。エネルギー効率は約7%と低い(93%が無駄)。電気機関車は26%、ディーゼル機関車25%で、動力近代化につながった。歩行のエネルギー効率は65%で、詳細として1)一歩ずつ着地した足の膝が曲がって伸びる、2)同時に体全体が上下動する、3)さらに同時に腕が前後に振られる、4)前に出た足は地面にエネルギーを吸収されて一瞬止まる。
 一方で、なんと、自転車のエネルギー効率は98.6%と高い。ママチャリでは時速15-16kmぐらいで楽に移動できる。歩行で時速3-4kmなら楽に歩ける。歩行は安静時の6倍以上、ランニングは自転車の4倍のエネルギーを消費する。かつて、汗水たらして労働でエネルギーを使ったが、現代はわざわざフィットネスでエネルギーを使わねば、健康を保てない時代となった。あなたは、どのようにセルフコントロールができるだろうか?

(板東浩、医学博士、ピアニスト、https://www.pianomed.org/


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