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中央テレビ編集 


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Dr.板東のメディカルリサーチ No.224
<オリンピアン 生涯目標 設定し>

 いまパリでオリンピックが開催中で、手に汗握る熱戦を楽しまれているだろう。TV観戦でパリ市街を見て思い出したことがある。私は今まで、学会出張でフランスなど欧州の学会に参加し、アジアの極東に位置する日本から何度も行き来してきた。この地図で気づくこととは? 日本は東西、南北ともに約3000kmと長い。東京と大阪間(約500km)は、新幹線で2.5時間の距離だ。フランスはこれくらいの大きさで、実をいうと欧州の国々はお互いに近い距離にある。パリからイギリスのロンドンまで、国際特急「ユーロスター」で約4時間。徳島から全国各地に移動する時間と比較してほしい。欧州で仕事やバカンスなどで動くのは便利だな、と常々感じている。

<期待大 スケートボードの 活躍が>
 今回はスポーツの話題を。私は日本スポーツ協会(JSPO)認定スポーツドクターで、World Skate Japan (WSJ)の指定医を担っている。国際的な管理を担うWSJはパリ五輪で、スケートボード(ストリート、パーク、男女)に選手10名を派遣した。小野寺、白井、堀米、赤間、中山、吉沢、永原、草木、開、四十住各選手の活躍に期待したい。

<大会中 選手の体調 支えつつ>
 東京五輪19日間のレポートが、国際的に権威がある英国スポーツ医学雑誌(Br J Sports Med)に発表された。治療を受けたのは選手11,420人中567人(負傷416件、非熱中症51件、熱中症100件)で、非選手312,883人中541人 (負傷255件、非熱中症161件、熱中症125件)であった。マラソンと競歩は発生率が最も高く(17.9%)、負傷の発生率が高かったのは、ボクシング(13.8%)、スポーツクライミング(12.5%)、スケートボード(11.3%)。全体を通して、負傷や熱中症は予想より少なく、重大事態はなく、適切な準備が貢献したと評価された。

<アスリート 貴重な将来 考えて>
 スポーツ選手は長年にわたり努力を続け、その栄光が称賛に値することは誰もが理解している。しかし、長い人生からみた身体的負担や心身、ライフスタイル、社会的諸問題も重要だ。夏季・冬季のオリンピアンの調査研究で、東京 2020/2021への出場者も解析中である。その目的や目標には、リスク要因を特定し、リスク軽減戦略を考え、アスリートの現役時代や引退後の健康の保護が含まれる。
 なお、アスリートは反復練習による慢性疲労や関節の諸問題があり、ずっと後で顕在化することも。競技者としての体調を、信号機の色にたとえてみよう。痛みが強ければ赤色とわかる。時に多少の疼痛があり、黄色の状態で続ける選手は多い。はたしてこれでいいのだろうか。次第に黄色から赤色に移行するため、各自が適切で妥当な(optimal)レベル(青色、緑色)で過ごしてほしいと願っている。

(板東浩、医学博士、ピアニスト、https://www.pianomed.org/


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