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中央テレビ編集 


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Dr.板東のメディカルリサーチ No.223
<プライマリ・ケア 人を地球を 救う術>

 いま求められている総合診療科とは⁈ 医療の歴史を振り返り、人が集団生活をするようになり誰かがお腹が痛くなった場合を考えてみたい。巫女(みこ)や呪術師などリーダー役が祈祷したり、お腹に手を触れたり(手当て)、薬草を与えたりして、宗教と医療が混在していた。その後医療が広まり、研究につながる医学が生まれることに。ただ、長期にわたり次第に細分化され、特定のパーツだけを診る臓器別専門医が大多数を占めることになった。その反省から、広く人の心身全体を診る機能的専門医(PC医)を養成するプライマリ・ケア(PC)医学(総合診療)の必要性が叫ばれている。

<先駆けて 禁煙宣言 学会で>
 私は日本PC連合学会で長年学んできた。本学会の情報はインターネットでも公開されており、四国ブロック支部の沿革の概要も示されている(表1)。この中で、四国支部は日本の医学界に先駆けて、2002年「禁煙宣言」を行った。その後各医学会から同様の宣言が続いて発出され、臨床的にも社会的にも意義深い貢献ができたと思う。

<身体心理 社会的な 軸で視る>
 PC医学は身体の不調だけを診るだけではない。身体(生物的Bio-)、 心(心理的Psycho-)、 家庭や職場(社会的Social-) と多面的に視る。社会情勢は日々変動するため、PC医は政治経済の変動にも留意し、地域医療の変化に対応している。  
 現在の気候変動は、地球規模ですべての地域に大きな影響を与えている。気候に加え、大気や宇宙、海洋、大陸、生物圏のバランスなどすべてが不安定化し、人間にも多大な影響を及ぼす。この状況で、各分野で協調した学際的な研究の展開を期待したい。

<気候非常 事態宣言 発出し>
 第15回日本PC連合学会学術大会が2024年6月に浜松で開催された。その際「プライマリ・ケアにおける気候非常事態宣言(浜松宣言)」が発出された(表2)。
 この4項目の取り組みを通じて、健康で持続可能な社会の実現を目指す。今までQOL (Quality of Life)の重要性が唱えられてきたが、その詳細として、生活の質・人生の質・生命の質という多軸の意味合いが含まれる。今後環境変化に対応しながら、我々人間はどう地球と共存していけるのだろうか?

(板東浩、医学博士、ピアニスト、https://www.pianomed.org/

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