世界情勢をみると、欧州でも中東でも諸問題が続き、人々の命が脅かされている。これらと比較すると、我が国は、ある程度のリスクは存在するが、おおむね平和で安定した国と判断されよう。今月は、個人の幸せや社会の幸福、国家の福祉などについて考えてみたい。
<日本人 利用厚生 継続中>
我が国で健康の維持増進に寄与してきたのが、厚生労働省である。厚生という言葉は、「正徳利用厚生」(書経)に由来。「徳を正しうして用を利し、生を厚うして、これ和し(正徳利用、厚生惟和)」と読み下す。つまり「衣食を十分にし、空腹や寒さに困らないようにし、民の生活を豊かにする」こと。「利用厚生」とは「物を役立たせて用い、人民の生活を豊かにする」と大辞泉にある。労働の「働」とは、日本で作られた漢字(国字)。なお「はたらく」とは自分のためではなく、端(はた)にいる周囲の人々を楽(らく)にさせるためという話もある。
<健康に 働き安心 する日々を>
さて、厚生労働省は英語でMinistry of Health, Labour and Welfareと表記される。人が生まれて、健康に(Health)働き(Labour)、安心して生活を送る(Welfare)いう行政の考え方に沿う。Welfareとは「福祉」を示す。Welとは英語のwellであり、良い、健康で、満足のいく方法で、望みに応じて、という意味を含み、will(願う、意志)にも関連する。Fareとは運賃を表し、本来faran(旅する、行く、出発する、進む)という言葉から、生きる、暮らすという意味合いに拡がった。以上から、Welfareとは幸せに生きていく状況で、福祉につながり、幸せや幸福という意味を含んでいる。
<Farewell はwelfareと同じ 良き旅を>

それではクイズを。幸福と福祉はいずれも幸せという意味だが、その違いとは? 「幸福」とは各個人レベルの幸せを、「福祉」とは社会や国レベルの幸せを表す。主観vs客観的幸せとも云えよう。近年、「幸せ」を英訳する場合、welfare(快く生きる)、wellbeing(健やかな人生)などが多い。なお、well+fareの順番を逆にするとfare+wellとなり、farewell
party (送別会)などと使われてきた。「良き旅を」を 意味し、ボンボヤージュ (Bon voyage、良い航海を)と同様といえよう。
<幸せに導く ポジティブ心理学>
幸せを得る方法とは? いま注目されているポジティブ心理学のPER MA理論を示すので、参考になれば幸いである。
(板東浩、医学博士、ピアニスト、https://www.pianomed.org/ )

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