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中央テレビ編集 


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Dr.板東のメディカルリサーチ No.220
<青色の効果 心へポジティブに>

 日本では4月に新学年が始まり、ちょうど国花の桜が咲く頃にあたる。職場でも年度が替わり、人事異動で新しい出発も。別れあれば出逢いもあり、青春の真っただ中、若い世代が清々しく社会に巣立つときと云えよう。この時期、ふっと脳裏に浮かんでくる音楽とは? 恩師・日野原重明先生が全国で講演を続けていた際、皆で歌っていた「故郷(ふるさと)」である。

<過去現在 未来に続く 心の歌>
 故郷の歌詞をご覧になって気づかれるだろうか? 1.2.3番の歌詞は、赤色で示したように、それぞれ過去、現在、未来の状況を表す。また、対比の表現として、山と川、家族と友人、雨と風なども。ここでは、
青と清に注目して話題を展開してみたい。

<澄み渡る 綺麗な青から 派生して>
 漢字の魅力は奥深い。「
」は古い字体で上部が「生」(草木が生まれる、澄み渡る)、下部が「丹」(聖なる色、神社の鳥居の丹塗り)の成り立ちである。「」は「氵(三水偏,さんずいへん、水」(澄み渡る)+「青」で、スッキリした水を意味する。なお、青色と緑色の色合いや解釈は、長年相互に重なってきた。草や木々の葉は近くでみると緑色だが、山を遠くからみると、光の波長の関係で青色に見えるもの。日本にある信号の色は青色と呼ぶが実際には緑色であり、米国で信号の色はgreenとなる。

<情けとは 綺麗な心で 人想う>
 心理学的に、感情や心情の「
」(なさけ)は「心+青」(偽りのない心)を意味する。「情けは人の為ならず」と言われるが、巡り巡って自身に戻ってくるもの。精神の「」は「米+青」の成り立ちだが、なぜお米なのだろうか? 多数のお米の粒から、汚れのない綺麗な(青)ものを撰(えら)びわける作業を精米と呼ぶ。汚れを丁寧に除いたことにより、清い、美しいという意味も。私たちの心は、神様のように精緻な感覚で精密に働くため、精神、精霊などと表現される。偏が「立」の場合、漢字「」は人名や靖国神社等に使われ、澄み渡った安らかな状態で、「」かに立つという意味合いを含む。
 日常生活で繁用される漢字がある。太陽の光が燦々と降り注ぐと日中の天気は「
」で、心も晴々。目上の人に何かを依頼するとき、請願・申請・請求したり、相手に強く求めるときは要請したりするだろう。「」とは心をすっきりさせて偽りがない言葉や気持ちでお願いすること。中国語では、pleaseの意味で繁用される。例えば「私に水をください」の場合、英語では「please give me water」、中国語では「請給我水」となり、まったく語順が同一となることに。日本語は最後まで聞かなければ肯定か否定かわからないが、英語や中国語は最初に断定するのが特徴だ。
 青と云えば、「真珠の耳飾りの少女」(フェルメール)を思い出す。鮮やかな青色のターバンは、ウルトラマリン・ブルーという、当時黄金にも匹敵するほど高価な宝石の『ラピス・ラズリ』を砕いて描かれた。青色は心の安定やリラックス効果、集中力を高める効果がある。「
」の世界は魅力的と云えないだろうか?!

(板東浩、医学博士、ピアニスト、https://www.pianomed.org/

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