いま、世界は混沌としている。東欧に加え中東でも予期せぬ事態となった。複雑な歴史や宗教観が存在するのはわかるが、なぜそこまでに至るのか? 日本人にはなかなか理解するのは難しい。
一方、大リーガーの大谷昇平選手にとって、2023年は特別な年であった。ヨーロッパでも、サッカーのロナウドより優れたアスリートと評価。野球の技術面だけではなく、彼のコメントや振る舞いが多くのファンの心を魅了することに。なぜだろうか。日本人からみて、ごく自然に対応しているようだ。やはり、日本で生まれ育ち、野球を通じて心身が磨かれたのであろう。今回は、日本人の心 や気質、歴史、宗教観などについて、少し考えてみたい。
日出ずる 処の国が 日本に
国の名称「日本」の由来は、「日出ずる国」とされる。700年頃中国に送った国書で天皇を「日出ずる処の天子」と表現。その意味は「太陽が昇ってくる場所で世界を治める王者」となる。「日が出てくる本(もと)にある国」から「日の本」→「日本」になった説が有力だ。学習漫画本の表紙を図に示す。
日本人の気質について、基盤を作ったのは聖徳太子と知られる。太子は天皇家の出身で神道を護る立場にあり、同時に優れた仏教学者でもあった。そのため、複数の宗教を生かすという初めての発想を実現した。「仏もあれば神もあり」と神仏習合の国造 りへ。つまり、「和を以て貴し」の理想的社会像を目指し、当時世界中で最高の宗教学者であった。この精神性こそが、日本人の基盤となったといえよう。
神道や仏教、儒教を包含し
日本は長い戦国時代をへて、平和な江戸から明治時代へと移る 。ここで歴史的な人物が登場した。東京女子大学の初代学長で、外交官を務め、国際連盟の事務次長としても活躍した新戸部稲造である。彼が外国の要人と教育や文化を議論したときのこと。「日本の学校で宗教教育が行われていないのに、なぜ道徳を教えられるのか」という問いに彼は返答ができなかった。
新戸部は悩んだ後、ある結論に。日本には聖書やコーランなどの絶対的な教えがない。一方、自然を崇拝し共に生きてきた日本人のアイデンティティがある。その真髄は「神道や仏教、儒教を基盤とした武士道」だ。彼は世界中で注目される書籍をまとめた。そのポイントは、「武士道とは刀で戦う意味合いではなく、日本人の宗教観に近い大切な精神性が詰まったもの」。著書「武士道」は30カ国語以上の言語に翻訳されている。
いま世界はイデオロギーや価値観が交錯する複雑な時代となった。今後、世界が平和に進む道が存在するだろうか。「武士道」の概念こそが、国際的に調整可能で貢献できるものかもしれない。
(板東浩、医学博士、ピアニスト、https://www.pianomed.org/ )
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