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中央テレビ編集 


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Dr.板東のメディカルリサーチ No.208
<野球でも 医学も歴史 紡いでいく>

 先日、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本が優勝、おめでとう。準決勝と優勝では日本中が感動し、目頭が熱くなった人も多い。なぜ、これほど人の心を捉えるのだろうか? 二刀流の大谷翔平選手、ヌートバー・L選手の活躍が注目され、村上宗隆選手は逆境に耐えて最後に花開いたといえよう。テレビや報道では、あらゆる情報やコメントが発信されてきた。本稿では、あまり語られていない側面に多少触れたい。

◆実際は 粘い野球が 勝因に
 このたび優勝に至った背景で注目したいのは、華々しい本塁打よりも、安打+四死球で計算される出塁率である。データをみると、吉田正尚、近藤健介、岡本和真各選手は5割以上出塁した。テレビ観戦では一球毎にドラマが展開するが、日本選手は本当に選球眼が良く本当に粘い。
 だから、相手投手も根負けして真ん中に投げてしまうことに。すると、ヒットや長打になる確率が上がる。日本選手は誰もが超一流だが、各々が役割を充分理解して実践した。このように、目に見えない背景がある中で、地道に負けない勝負を続けてきたことが結果につながったと思われる。

◆師匠から 弟子につなげて いく歴史
 侍ジャパンの指揮を執ったのは栗山英樹監督である。氏の哲学と行動、配慮が歴史を作ったといえよう。そもそも栗山氏のお陰で、二刀流・大谷選手が誕生。そして、海を渡って数百年に一人出るか出ないかという前人未到の選手にまで上り詰めた。また、栗山氏の配慮とサポートによって、今後、村上選手が世界的なプレーヤーとなるだろう。
 特に注目したいのはダルビッシュ有選手である。最年長の投手が早期にキャンプに入り、若い宇田川優希選手をサポートし、トップレベルの投手たちに、自身が持つすべての知識やコツを惜しげもなく教えた。こんなことは常人にはできない。それも、気軽に話しかけてチームの雰囲気づくりにも貢献し、この気持ちを選手全員が共有。いろいろなニュースを報道が連日伝え、日本中が盛り上がった。これらすべてが人々の絆を深め、認知されない僅かな神様の関与がWBC優勝に繋がったと私は確信している。

◆医療でも 議論を深め 研鑽に
 人間の価値や評価とは、その領域でその人自身が残した結果やデータだけでは判断されない。後輩に「伝える姿勢や伝えたもの」が重要だ。今回研鑽を深めた日本の投手は、一生ダルビッシュ氏を尊敬し、自分も後輩に助言を続けていくだろう。世界で高く評価された日本の投手陣はさらなる高みを目指していくことになる。このように、日本で醸成された土壌や文化、人間関係が、さらに日本の価値を高めるのは間違いない。
 なお、いつも謙虚に学びつつ皆で研鑽を深める事例がある。米国の医療ドラマなどで、診断や治療が難しい症例について、教授から研修医、医学生までが自由に意見を述べあう場面が知られる。自由闊達な議論こそが血となり肉となり、将来の発展につながっていく。
 いずれの分野でも、共に学び将来に向けて皆で高めあい、歴史を紡いでいってほしいと願う。

(板東浩、医学博士、ピアニスト、https://www.pianomed.org/

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