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中央テレビ編集 


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Dr.板東のメディカルリサーチ No.206
<筋肉を うまく鍛えて 健やかに>

◆足腰が 自然に弱る 加齢にて
 あなたはいろいろと工夫をして、健康の維持と増進を図っているだろうか? 私は今まで食事には「糖質制限」を、運動には「有酸素運動と多少の筋トレ」を、心理には「音楽・芸術療法」を推奨してきた。
 人は誰もが加齢とともに足腰が弱ってきてしまう。フレイルにならないようにどうすればよいか。運動の基本はウォーキングで、速度を上げるとジョギングからランニングとなる。運動で刺激を与える点ではランニングがよいが、内科の病気や腰・膝の状況から無理をしないでほしい。今回は、お役にたつ情報とアドバイスを皆さまに伝授したいと思う。

◆スクワット エキセントリックの メカニズム
 運動で筋肉を収縮させる際、2つの場合がある。一つは両手に持ったダンベルを胸の前で挙上して、肘を曲げる動作のような場合。上腕の力こぶ(上腕二頭筋)は膨れながら距離が短くなっている(
求心性)。
 他方は階段をゆっくり降りるとき、太ももの前の筋肉が収縮しながら引き延ばされている(
遠心性)。また、ゆっくりと椅子に座るときにも、太ももの筋肉が同じ状態で、スクワット運動に近い。後者は「エキセントリックトレーニング」と呼ばれ、近年注目されることに。その理由は、筋肉を強く刺激して効果が大きいからだ。

◆階段を ゆっくりと降りる 習慣を
 有意義な研究がある。その結論は「階段をゆっくりと降りる」という簡単な方法こそが、実は大きな効果が生み出す。その結果を簡単に示そう(Eur J Sport Sci. 2022;22:279)。
 
①通常の求心性収縮(CON)②遠心性収縮(ECC)③上着のベストに体重の15%の錘を装着(ECC+)という3群で実施し、3週と6週で検討した。その結果、ふくらはぎ(下腿)、ふともも(大腿)の筋肉量が増えた。さらに、他の検査として6分間歩行テスト、筋力パワーでもECC+に高い効果が見られる。
 他の実験で、階段を昇る場合と降りる場合とが比較された(右図、BMC Res Notes. 2013;6:87)。すると、ゆっくり階段を降りる方法が効果的だった。
 以上より、皆さまにお役にたつ助言を。ダンベルはゆっくりと降ろす練習が効果的。階段は手すりを持ってスローモーションで降りたり、椅子にも超スローで座ったりすると、足腰が強くなるだろう。
(板東浩、医学博士、ピアニスト、https://www.pianomed.org/

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