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中央テレビ編集 


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Dr.板東のメディカルリサーチ No.201
<我が国の 保険診療 最良だ>

 数年来、パンデミックが世界を襲い、医学、医療、社会、経済、教育、文化にも、人々の生命・生活・人生(life)にもあまりにも大きな影響を与えている。本問題に、最善の方策は簡単には見つからない。今回は、医学・医療に関わる日本の保険診療について触れたいと思う。

◆基盤には 教育文化 民度あり
 私の専門は糖尿病やプライマリケア(PC)医学である。PC医は一人の患者を長年診る
経糸(縦糸)と、ある時点で多数例を疫学的に観る緯糸(横糸)という2つの視点で考える(図1)。PC医学は医療現場のmedical careと患者自身が行うhealth careを含む。我が国ではこれらの各因子のレベルが高く、基盤となる教育や文化、民度も優れていると云えよう。

◆日本ほど バランスとれた 診療なし
 
日本の医療について議論があり、問題点を批判する識者もいる。しかし、諸外国で医療視察を行い報告してきた私は、日本ほど全般に優れた診療が実践されている国はないと思う。秀逸な点を要約すると、近接性、包括性、協調性、時間的継続性、良好な患者医師関係性、地域志向性、家族志向性などとなる。PC医学の概念と枠組みを
図2に示した。

◆皆保険 制度がみんな 助けてる
 我が国の医療で基盤となるのが、国民健康保険法(国保法、昭和34.4~)である。すべての国民がなんらかの医療保険に加入し、けがや病気の際に医療給付が受けられる状態を目指す。この基本的な方向性に沿って、日本の医療福祉行政は長年にわたり発展してきた。
 医療福祉現場では、医療保険と介護保険の両者がうまく機能している。様々なケースにきめ細かな対策が検討されてきた。今後の課題は、介護保険事業の円滑な遂行と評価となるだろう(
図3)。

外国の 状況みると よくわかる
 諸外国は日本と全く異なる。たとえば、米国の公的医療保険制度において、対象者は高齢者や障害者、低所得者に限られる。人々は民間医療保険に入るが、費用が高く難しいことも。そんな時期に病気になったり、脳卒中後のリハビリを行ったりすると、短期間でその家庭は経済的に破綻してしまう。
 また、命より経済や規則が優先される。もし、病院の玄関先で急に倒れたとしても、日本のようにすぐ助けてくれるだろうか。病院の警備員が「あなたの身分証明書は?、保険は?」などをチェックするのが必須であり、ルールに沿って行動しなければあとで責任を問われてしまう。ハンバーガー店のスタッフがマニュアル通りに対応するのと同じ。日本のPC医学や保険制度が今後も継続していくように願う。

(板東浩、医学博士、ピアニスト、https://www.pianomed.org/

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