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中央テレビ編集 


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Dr.板東のメディカルリサーチ No.200
<この夏は 陸上競技が ポイントに>

 2022年6-7月、私は陸上競技の領域で、いろいろと考えることがあった。それは世界のトップクラスからアマチュアまでの範囲に及んでおり、本稿でその話題に若干触れてみたい。

◆オレゴンの真夏は 世界陸上で
 最新ニュース・世界陸上OREGON2022から、二刀流の米国のデボン・アレンの話題を紹介する。アメフト(NFL)の選手であり、110mの世界的ハードラーでもある。彼は準決勝でのレースで好走し、スタートの反応時間は0.101秒と猛ダッシュ(
図1)。しかし、決勝で失格。理由は反応時間が0.099秒と0.1秒より1000分の1秒早かったため。人間が音を聞いて体を動かすまで最低0.1秒かかる医学的根拠によって、0.1秒以内で失格というルールがある。

◆究極まで 反応縮め 神スタート
 同様のことが以前にも。日本選手権(2019)で、日本記録保持者の金井大旺選手がフライングで失格に(0.099秒)。金井選手の能力は天性のもので限界以上かと監督は云う。通常0.120秒なら良好とされ、2016年山縣亮太選手の0.107秒は「神スタート」と称された。はたして、本ルールは妥当なのか? 反応時間を縮める努力を長年続けながら、ベストを尽くして失格というジレンマも、現に存在する。
 ここで、スポーツドクターでもある私のアイデアを示す。反応時間が速い選手は、数年来同じ傾向だろう。見た目でわからないフライングの場合は、レースを止めずに継続。他の選手にとっても間違いなく良い。ゴール後に、最近のデータと比較して結果発表するのはいかがだろうか?

◆マスターズ 世界陸上 日本が金
 私はマスターズ陸上の短距離選手で、同年代の仲間を紹介したい。
図2の4名で、左端は板東。隣は香川の村上充先生で、東京教育大学(現 筑波大学)のとき10.9秒を記録、指導者/競技者/研究者だ。3,4番目は愛媛の渡部四郎、新居田哲司氏で、我が国のトップ4人中の2名。世界マスターズ陸上選手権 (2016、オーストラリア・バース)の400mリレー(M60-64)で歴史的金メダルを獲得された(図3)。2年後、世界マスターズ陸上2018の同リレー(M45-49)では、朝原宣治氏や武井壮氏の4名の侍Japanが優勝したニュースをご存じだろう。
 世界の陸上競技・短距離において、日本人がファイナリストになるのは簡単ではない。しかし、今やトレーニングの工夫で期待できる時代になった。また、世界のマスターズ陸上では、加齢とともに日本人が次第に上位を占める傾向に。主な理由は、規則的な生活習慣や研究を続けていく日々の姿勢だろう。これから10~20年後には、日本の陸上陣のさらなる展開が期待される。

(板東浩、医学博士、ピアニスト、https://www.pianomed.org/

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