現在は「アンチエイジング」の時代。その内容は幅広く、目標は身体・心理・社会的な健康と幸福を求めるものだ。抗加齢医学の領域で私が尊敬しているのは、日本抗加齢医学会前理事長で慶應大学医学部の坪田一男教授である。お人柄は円満で、頭脳、実行力、研究事績に優れ、産官学の共同研究を進めるパワーは素晴らしい。先生が関わる「食べリズム」という研究報告が先日、ある学会で示された。
◆コロナ下で 外出自粛が リズム変え
発表された内容は、新型コロナ流行下による外出自粛が生活リズムに及ぼした影響だ。スマートフォンアプリによるビッグデータを活用した方法で行われた。様々な角度から多くの知見が得られたが、その中で4項目を示す。夕食時間が25分早まり、男性で間食が約2倍に増加、平均歩数/日は23%減少、主観的疲労感はほぼ不変という。
さて、この結果と比較して、あなたの生活はいかがだろうか? 生活習慣に対して良いこともあれば悪い影響もあるもの。夕食が早くなれば通常生活習慣が改善される。しかし、就寝前の間食が増えると、逆に悪い影響に。一方、女性が間食するタイミングは不変であり、15時-16時ごろという。
◆食リズム 消化吸収 影響し
コロナ禍で人々の生活様式が変化した。リモート会議など便利になったが、逆に食事運動リズムの変化がポイントだ。貯金ではなく、貯筋でもなく、逆に「貯脂肪」で健康を害することに。実は、食リズムの変化により、消化吸収が影響を受ける。食物消費は摂食、吸収後、空腹、飢餓という方向で循環している(Stockman、図1)。 これが「12時間は空腹に」という助言の根拠だ。なお、空腹-飢餓という表記は、おおむね絶食―断食に相当する意味合いを示す。
◆痩せるには 隔日絶食 推奨す
肥満を基盤として糖尿病、高血圧、脂質異常症を有する患者はメタボリック症候群と呼ばれてきた。元凶(黒幕)は過剰な脂肪である。つまり、高体重があると悪い友達(bad companion)がすり寄ってきて、高血糖、高血圧、高脂血症、高尿酸血症と「5高」に。ヒトの身体には脂肪組織が2種類ある。白色脂肪細胞は皮下や内臓に分布し、余分なエネルギーを脂肪として蓄積する。誰もが料理の際に見かけるラードが一例だ。一方、褐色脂肪細胞は主に鎖骨付近や胸まわりに分布し、脂肪を燃焼させて熱を産生するように働く。首筋や肩に熱いシャワーをかけるとよいという根拠に繋がる。
今まで、隔日絶食(every-other-day fasting, EODF)は、体重管理、健康管理などにプラスと評価されてきた。そのメカニズムは、白色脂肪組織内に存在する褐色脂肪の発達を選択的に刺激することで、肥満やインスリン抵抗性、脂肪肝を劇的に改善させるという(Li、図2)。絶食時間を継続しておくことが必要だ。
新年にあたり、皆さまには食事のリズムや空腹時間を工夫して、健やかに過ごされたいと思う。
(板東浩、医学博士、ピアニスト、https://www.pianomed.org/ )
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