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中央テレビ編集 


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Dr.板東のメディカルリサーチ No.187
<長命を 願う心は 昔から>

 人は誰もが健康長寿を願う。歴史を遡ると、古代ギリシアでは「歴史の父」ヘロドトス(Hēródotos)が活躍し、「不老長寿の泉」について記した。引き続いて、古代ローマでは、劇作家テレンティウスが「老化は病気である」と、そして政治家キケロが「病気と闘うように、老化と闘わねばならない」と述べている。このように、「元気で長く生きるにはどうしたらよいか」と、数多くの学者が模索してきた。

◆加齢は自然 一方老化は 機能落ち
 アンチエイジングという言葉はいま広く知られ、抗加齢医学を意味する。この中で、似ているが区別すべき用語が2つみられる。1つ目は、誰もが歳を経ていく
「加齢(aging)」である。人が生まれたときを0年とすれば、小児・青年・成年・老年期と、0→約100年という目盛りを当てはめられる。  
 他方は、次第に弱っていくという
「老化(aging)」である。これは、加齢に伴って身体がうまく働くかどうかという機能を意味する。たとえば、筋力や肺活量、心臓の働き、病気に対する抵抗力などが低下していく。ヒトは0~20歳までは様々な成長がみられる。20歳台からいろいろな機能が次第に落ちていくが、まだ未病の段階といえよう。おおむね60歳台から病気のレベルとなり、加齢関連疾患が増えていくことに。人によって大きな差異がみられ、その後寿命を迎えるが、ヒトでは最長約120歳とされる。

◆生存率 ヒトやマウス ハエ同じ
 生存率について調べた結果があり、ヒトやマウス、ハエの3者は同様な生存曲線を示す。つまり、ある生物100-1000個体の寿命を調べると、同じような割合となる。ヒトは年、マウスは月、ハエは日という単位となり、ヒトと比較してマウスは30倍、ハエは120倍速く、固有の速さで老化が進む。参考として、イヌは5.5倍のため、20歳のイヌはほぼ90~100歳のヒトに相当する。人は30歳以降約8年毎に死亡確率が約2倍ずつ増す。
 そこで、80歳では40歳の30倍も高くなる。ただ、90歳以上の超高齢者では増加が緩やかとなり、超高齢まで生きる人々では遺伝的素因が異なるのであろう。ヒトが老いる原因には様々な学説があるが、1)酸素による酸化でさび付く、2)腸内細菌叢のバランス、3)ブドウ糖が関わる糖化プロセスの3者が理解しやすい。
 最後に、若返りたい人は絵画をご覧頂きたい。ルーカス・クラナッハ(Lucas Cranach der Ältere、1472-1553)作の「若返りの泉」(Der Jungbrunnen、独)である。なお、Der は定冠詞the、jungはyoung、 brunnenはspring, fountainのこと。彼自身は若さを保ち当時81歳まで生き、77歳で描いた自画像を示す。以上の情報から各自が心身を刺激し、プラスになれば幸いである。

(板東浩、医学博士、ピアニスト、https://www.pianomed.org/

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