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中央テレビ編集 


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Dr.板東のメディカルリサーチ No.176
<心身に 社会の因子も 考慮して>

 プライマリ・ケア(PC)医学、全人的医療、統合医療、糖尿病学、心身医学、これらの領域には、ある共通する視点の存在が知られてきた。それはいったい何だろうか? 
 この共通視点とは、生物・心理・社会(bio-psycho-social)モデルである。生物的視点とは、身体的なこと。どこか身体の調子が悪かったり病気になったりして、医療機関で診察を受け、外科的処置や薬剤などで治療を受けることを意味する。心理的視点とは、単に身体だけではなく心にも寄り添う姿勢を示す。社会的視点とは、患者はだれもが会社や家庭で生活の場があり、この面についても配慮が必要となる。これらの考え方は医療だけではなく、あらゆる組織や社会において参考としてほしい。

<内科医と 外科医で異なる 判断が>
 ここで、具体的な例を2つ挙げてみよう。一例は糖尿病で内科診療を受ける場合。生物面:食事と運動に留意し、糖尿病の薬を飲むこと。心理面:糖質制限が実際にできるか、するつもりがあるか。社会面:職場や家庭の状況はどうか、食事や運動について協力体制はどうか。なお、実際の診療風景では、よく患者背景を知るナースも含めて、一緒に相談し方向性を決めていく。このように、3つの軸で検討することが大切だ。あらかじめ相談しておくことが成功への道につながっていく。
 他方の例は、何かの病気で手術を受ける場合である。外科医に期待するのは、あくまで優れた判断と技術である(生物面)。優しい言葉をかけてくれるが、手術は下手という外科医では困る(心理面)。職場や家、お金のことなども多少配慮した内容で手術を済ませた?などというのでは不安に思う(社会面)。
 このように、3つの軸があってもその重みやバランスは異なってくる。私は、医師・患者関係で3軸を説明したが、読者においては、他の状況で3軸を一度考えてみてはどうだろうか?

<緊急性 判断可能 迅速機器>
 さて、内科や外科では、診療中の患者さんに対して、大至急で検査が必要なことがある。今回、とてもコンパクトで便利な迅速機器を紹介したい。これさえあれば、生物的な軸において、診断と治療の方向性を数分で決めることができる。
 右図は筆者自身の結果例を示す。HbA1cは糖尿病の有無、CRPとWBC(白血球)は発熱や疼痛など炎症の指標、RBCとHGBは貧血の有無、PLTは出血傾向の有無などが直ちにわかる。本機器の優れた点は、簡便に緊急性を判断できること。かつて痛むお腹に手を当てるという「手当て」だけの時代があった。一方、現在では客観的なデータがすぐに得られる有難い環境となった。さらに充実した生物・心理・社会モデルを活用できる時代が到来している。
(板東浩、医学博士、ピアニスト、https://www.pianomed.org/

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