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中央テレビ編集 


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Dr.板東のメディカルリサーチ No.173
<哲学の心が 医学志す>

 プライマリ・ケア医学の国際学会に出席するため、パリを訪れた。105歳までご活躍された日野原重明先生の哲学であるHinohara-ismや著名な医師ウィリアム・オスラー先生のOslerismについて基調講演を担当させて頂いたからである。
 以前にノーベル平和賞を受章したシュバイツァー博士(1875-1965)が知られる。氏は神学を学び、オルガン奏者としてレコードを出すなど音楽家でもあった。その後医学を志し、アフリカの医療に献身的に尽くしたのである。氏の基盤には、生まれ育った環境や崇高な哲学が存在し、医と芸術の心が共存しているようだ。

平静の心が 医療発展し
 また、日野原先生が長年ライフワークとして研究された医師がおられた。カナダの医師オスラー卿(1849-1919)である。トロント大学で、神学と自然科学を学び、後に医学の道に進んだ。名著として「医学の原則と実践 (The principles and practice of medicine)」をまとめ、さらに、出版した「平静の心 (Aequanimitas)」が世界の医学・医療に大きな影響を及ぼした。ちょうど、米国に留学中の日野原先生が感動し、その後オスラーの哲学が広く知られるようになった。  
 実際に、我が国の多くの医師や看護師は、オスラー卿や日野原氏による医学概論をいろいろな形で学んでいる。つまり、日本の医学および医学の基盤を築いてくださっているといっても過言ではない。


音楽と医療は同じ起源から
 実は宗教、音楽、医学は同じ起源である。集団で人間が生活するようになり、巫女など宗教が生まれた.木切れで何かを叩くリズムや、人の声の抑揚から音楽が誕生した。
 さらに、誰かが腹痛で苦しむとき、仲間のリーダーがお腹に手を当てて痛みを軽減。この手当てから診察・治療という医療分野に、さらに現代医学へと発展したのである。


(板東浩、医学博士、ピアニスト、https://www.pianomed.org/

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