あらゆる患者に対応できる医療として、統合医療が知られる。通常の西洋医学の治療だけではなく、漢方、鍼灸、音楽療法やアロマセラピー、マッサージなどの施術なども含み守備範囲が広い。
このたび、日本統合医療学会全国大会が鹿児島で開催される事になり、四国支部のお世話を担当させて頂いているため参加の機会を得た。 
今回の大会長はかつて四国で循環器を専攻されていた吉田紀子先生で、今回のテーマは鹿児島に因んだ「敬天愛人」である。読み下すと「天を敬い人を愛する」。西郷隆盛が、南洲翁遺訓で「講学の道は敬天愛人を目的とし、身を修するに克己を以て終始すべし」と述べたもので、学問の目的を述べた語として知られる。英語では「Revere
heaven, love people」となり、revere(崇拝する、尊敬する)はrespectやblessの両者の意味合いを含む。
私たちが「西郷どん(せごどん)」から学ぶことは 余りにも多い。彼が毎日見ていたであろう桜島が、ちょうど夕方の光に包まれていた。私の写真の腕がいいのか、天がそのタイミングを与えてくださったのか、不思議ながら素晴らしいシャッターチャンスを得たのでご披露したい。
◆少子高齢社会克服モデル
本大会では講演/シンポジウム/ワークショップ39と口頭/ポスター発表60があり、充実したプログラムであった。
中でも、吉田紀子先生による大会長講演は素晴らし かった。というのは、長年にわたり、医療、福祉、行政、経済、産官学を含めて、時代のニーズに沿ったプロジェクトをどんどん遂行してこられたからだ。それも、地元の鹿児島の人々が活き活きと人生を楽しめるように。また、観光政策も含まれ、経済振興がなされるような工夫がなされている。
具体的には、国民の健康プロジェクト、長寿と宝の子プロジェクト、伝統的な歌と踊りを伴う音楽運動療法、百歳の研究プロジェクト、フレイルの防止とロコモティブシンドロームなどの注目すべき企画がみられた。さらに、タラソテラピー、島の健康タラソツーリズム、医療村の観光、国際的なコミュニケーションと開発など、地域全体を発展させた実績には驚かされた。
◆成功を収めるプロジェクト
なぜ、このように成功を収めたのであろうか。先生に先見の明があり、地域性を大切にして臨機応変に進めたからこそ周りの方々に受け入れられたのであろう。このように、鹿児島における地域の発展は、桜島のエネルギーが基盤にあり、薩摩藩や島津斉彬氏による将来をみる適格な判断、西郷どんのスピリットと実行力、吉田先生と仲間の連携プレイなど、すべてが統合された結果ではないかと推察している。
(板東浩、医学博士、ピアニスト、https://www.pianomed.org/ )
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