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中央テレビ編集 


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Dr.板東のメディカルリサーチ No.162
<スポーツは 言葉を駆使し 発展へ>

 スポーツは生涯楽しめる。Sportという言葉は本来desport(des + port)に由来。つまり、desは否定語で、port(ポート)とは港、運ぶ、仕事を意味する。そのため、「仕事を離れて楽しむ」ことに使われているうちに、最初のdeが除かれsportとなった。
 日本では主に身体を使う運動がスポーツとされている。しかし、国際的には概念が違う。オリンピックでもかつて芸術部門があり、作曲でも競われた。最近では娯楽の領域も含まれ、囲碁や将棋、エンターテインメントなど幅広くカバーしてきているようだ。

音体に 言語研究 統合し スポーツは身体や心も含み、文化の一端を担う。かつて音楽と体育を一緒に音体と呼称したことがあった。さらに言葉は常に関与する。先日、京都工芸繊維大学で「スポーツ言語学会」が開催された。世話役はスポーツ言語学会代表理事、事務局長の清水泰生先生(同志社大学)である。
 清水氏とお会いしたのは「2001年ランニング学会研究集会」および日本初・本格的ミュージックマラソン「第1回JAZZマラソン大会」が開催されたとき。コースは風光明媚なテーマパーク「和歌山マリ-ナシティ」で、全国から4000余名が参加した。
 スポーツ言語学会研究会には、言語学やスポーツ科学、実験心理学、幼児体育などの専門家が集う。どんな言葉がどんな動きを引き出すか、未獲得の動きが獲得できるか、動きの実践で言葉の意味が変化するかなど、多彩な問題に対して、いろいろなアプローチを試みている。

いろいろな 種目すべてに 関連し
 科学研究費関連の「ことば・うごき」研究成果発表会とスポーツ言語学会研究会の両者が開催され、理論から実践までバラエティに富む発表だった。「子どもジャンプ実験データ分析」、「幼児表現教育者の育成に向けて」など。さらに、「クラシックバレエの基本姿勢における身体意識の構造」、「オノマトペを用いた歩行観察における印象評価と動作評価の関係」「発達系作業療法士の立場から「ことば」と「からだ」と「うごき」を考える」などの演題が続いた。いずれも運動や音楽、言葉、心理の各因子が絡み合い、興味深い切り口である。私は基調講演「スポーツと音楽でリズミカルな人生を」を担当させて頂いた。
 「高くジャンプ!」と言うと、もっと高くジャンプできるだろうか? 「腕を大きく振って」と腕に意識を置くと、パーフォーマンスが良くなるだろうか? いちど、みなさんに試してほしいと思う。


(板東浩、医学博士、ピアニスト、https://www.pianomed.org/

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