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中央テレビ編集 


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Dr.板東のメディカルリサーチ No.160
<春野球 富岡西に 期待込め>

 寒い冬から春めく気候となり、野球のシーズンが到来した。いま徳島で野球の話題といえば、春の甲子園に出場する富岡西高校が挙げられる。新聞でもインターネットでも、注目度が高い(図1)。進学校でありながら、秋の四国大会で大活躍。あれほど実力があり、それもノーサイン野球とは何とも不思議。さらに、選手たちは学校近辺で清掃活動を続けるなど、地域に対する貢献度も高く評価されている(図2)。その魅力とは何だろうか。

盛り上がる 野球談義で 分析し
 母校を甲子園出場に導いたのは小川浩監督である。実は、小川氏を含め、野球人が定期的に集まる会合がある。野球の理論と実践を深く研究するつもりだが、実際にはずっと笑い通しの野球談義が続く。メンバーには、以前徳島北高校を率いて甲子園に出場し現在城南高校の島一輝監督、さらに私の野球の師匠・浦崎裕久氏など。浦崎氏は長打率がとんでもなく高いスラッガーであるとともに、小川氏、島氏としばしば奥深い議論に至ることも多い。


北校と 富岡西の 違いとは
 先日、甲子園出場を祝して飲み会で盛り上がり、小川監督に寄せ書きをプレゼント(図3)。歓談しながら、今年の富岡西高校と以前の徳島北高校の違いを検討し分析してみることに。
 当時の北校は、あと一歩のところで甲子園出場を逃していた。実力はあるが、何かが足りない、何かがかみ合えば優勝すると。そんなタイミングで監督が交代し、生徒たちが新鮮な気持ちで監督の指示や指導に、ちょうどはまったのかもしれない。中心選手のセンターラインが安定し、守り抜くチームカラー。そんな中、当時の王者鳴門工業に打ち勝って大きな自信となり,決勝に臨み守り優勝。逆に言えば、中心選手が活躍しないと勝てないチームといえよう。
 一方、今年の富西は、当時の北高と同様に、ベスト8やベスト4の常連だが、何かが足りない、何か良いきっかけが待たれていた。
 両校の大きな違いはここから。富岡西高校では、小川監督が粘り強く辛抱強く、生徒に寄り添い、各自に考えさせる指導を導入。小さなプロセスを積み重ね、開花した。行き着いた先が「ノーサイン野球」の確立だった。
 つまり、今の富岡西高校の選手の方が野球を断然わかっている。この場面で何をするか、ポジションは? 配球は? 打球方向は? 打てなのか、待てなのか? カウントを作るためファールを打つ、最後にはショートゴロを打って相手にプレッシャーをかけるなど、細かい野球を知り尽くしている。そのため、どこからでも得点でき、誰が出ても自分が行うべき役割やプレーを熟知。そんな中、能力の高い中心選手の存在が、大きな駆動力になったのだろう。
 以上をまとめると、①監督自身が変化しつつ、生徒の変化に順応し粘り強く指導し続けた。②選手が野球自体をよく考えよく理解している、となろう。もうすぐ春の風物詩が始まる。富西の健闘を祈ります。

(板東浩、医学博士、ピアニスト、https://www.pianomed.org/

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