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中央テレビ編集 


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Dr.板東のメディカルリサーチ No.158
<将来を 見通す視力 あればいい>

 あなたの視力は大丈夫だろうか? 学童のころは正視が普通だが、わが国では受験勉強なども相まって、学生時代に近視となり、眼鏡をかける人も多い。その後はおおむね安定する。しかし、中高年になる頃から、遠視または老眼となることに。新聞を読むとき老眼鏡が手放せなくなる。
 人によって様々だが、加齢による調節障害は仕方がない。眼鏡のレンズについて、若い頃は近視で、その後は遠近や中近など、いろいろな工夫が必要だ。
 人間以外で、動物の視力はどうだろうか? 鳥は遠くから獲物を見つけるために、視力が非常に良い。犬は0.2-0.3程度、ブタは0.1を下回る程度。仲間のイノシシは同程度の視力で100m先から人間を見分けられるという。

五円玉使い 長さや距離わかる
 視力は1.0が標準と知られている。そもそも、視力の1.0とは何だろうか?かつてスイスの眼科医エドムンド・ランドルト(Edmund Landolt, 1846-1926)が考案したランドルト環を使った検査による数値である。彼は優秀で、数多くの研究や著作物を残した。かの有名なサー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(英国の作家、医師、政治活動家)とも親交が深かったことが知られる。
 さて、図1をご覧頂きたい。5m離れた距離で、幅1.5mmの切れ目の方向がわかる能力が1.0となる。なお、この切れ目の視角visual angleはほぼ1分であり、分度器にある1度の1/60というわずかな角度である。
 この説明ではイメージがわきにくい。そこで、わかりやすい例を。あなたの手をまっすぐ前方に伸ばして人差し指をたてる。これが50cmの距離で、幅が1cmで、これがほぼ1度だ。もし、あなたの人差し指の爪(幅1cm)に60個の小さな黒い点を描いて、50cmの距離で点々が識別できたら、視力1.0になる、というワケ。
 試してほしいのは、5円玉の活用(図2)。穴は0.5cmなので、0.5度である。5円玉を持って手を伸ばし、いちど夜に満月を覗いてみよう。実は、ちょうど月がぴったりの大きさだ。なお、地球からみる太陽の大きさも、ほぼ同じである。
 これらを応用すると、日常生活で計測できる。たとえば、徳島市内なら、眉山の上にある建物を覗けば、大きさや距離がわかる。また、橋の高さや長さ、煙突の高さや距離なども予想できる。ゴルフのプレー中、旗竿を5円玉で覗いて距離がわかればぴったり寄せられるかも。ただし、計算できても、実力不足の方には役に立たないかもしれない。

◆タッチして フォーカス合わす 新メガネ 
 視力が良くなる最新の話題を紹介しよう。レンズの焦点距離がワンタッチで切り替わり、手元も遠くもクリアに見える次世代メガネが登場した。三井化学株式会社が開発したもので、手元を見るときはワンタッチで近方度数をON。近方の範囲も広い(図3)。スマートフォンを見る際も、視線を下げたりメガネをずらす必要なし。あなたがこの眼鏡をかけると、将来を見通す力もアップするのではないだろうか。

(板東浩、医学博士、ピアニスト、https://www.pianomed.org/
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