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中央テレビ編集 


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Dr.板東のメディカルリサーチ No.153
<今話題 持続血糖 測定器>

血糖の動きを知りたい
 世界を見ると、糖尿病が広く蔓延しており、激増してきている。いままでは発展国の問題とされてきたが、実は発展途上国でも大きな医学的・社会的問題となってきた。その原因として、食事や運動、休養の3要素を含む生活習慣や、血糖を上昇させる糖質の過剰摂取が挙げられよう。血糖がどう推移しているのか、長年にわたり糖尿病学者は悩み、推測しながら対応してきた。
 そんな中、以前から研究が進められてきた「持続血糖測定器」が臨床応用され、糖尿病患者が活用できる時代になった。ようやく、この段階までコンピュータを活用する医療技術が発展し、嬉しく思う。今回は、この話題について紹介させていただきたい。

簡単に装着しスマホをかざす 
 医療の現場では、Continuous Glucose Monitoring (CGM)と呼ばれている。CGMとはどんなものか。上図のように、上腕に小さな測定器を設置しておく。服を着るのと同様に、特に痛みも違和感もない。このセンサーによって、いつでもどこでも血糖値をチェックできることに。スマホのように機器をかざすと、その瞬間、血糖が示される。
 自動的に24時間血糖をモニターしており、15分毎(上位機種は7.5分毎)に測定してコンピュータに記憶されるシステムだ。
 私が診療している患者の2週間のデータを右図で示した。横軸は0時から24時の時刻を、縦軸は、0から350 mg/dLの血糖値を示す。青線は14日間の血糖の推移の中央値である。平均的に、朝の8時ごろに血糖が250mg/dLまで高くなり、12時に80mg/dLまで低くなっているのがわかるだろう。

行動パターンと血糖の推移 
 以上のデータはコンピュータ解析でグラフ化され、2週間の傾向が一瞬にわかる。
 1日ごとのデータを検証するため、右下図に生活パターンが異なる3日間の結果を示す。Jan 28は通常の仕事を9~18時に行った。血糖が午前に高く午後に低いのは、午前は身体を動かさず午後は歩き回ったためと推測。Jan 30は仕事がなく食事量が少ないため、昼過ぎと夜に低血糖がみられた。Feb 01は仕事が15~21時で、午後から夕方に血糖が下降。1830分に食事をしたが、その際インスリン注射ができず、その後血糖が300~400台に上昇した。
 このように、糖尿病診療では、既製服(プレタポルテ)ではなく、オーダーメードの対応ができる時代が到来している。

(板東浩、医学博士、ピアニスト、https://www.pianomed.org/

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