中央テレビ編集 << 先月のコラムへ トップへ >> 次月のコラムへ Dr.板東のメディカルリサーチ No.152 <いま話題 水素の効果 期待され> ◆ 食後血糖を上げない 筆者の専門は生活習慣病である。肥満や糖尿病、高血圧、脂質異常症などが基盤にあり、さらに脂肪肝や痛風、高尿酸血症なども加わってくることに。これらの諸悪の根源は、あなたのお腹に溜め込んでいる内臓脂肪。これは財産ではなく、ここから悪さをするホルモンが出てくるのだ。近年の研究で、糖質摂取がよくないことがわかってきた。糖質を摂取すると血糖が上がり、膵臓からインスリンが分泌される。このとき、内臓脂肪を溜め込むように働くため、次第に太っていくことに。だから、「糖質制限」を続けると減量でき、生活習慣病が軽快していく。 ここで、糖分の吸収を遅らせる薬剤(αグルコシダーゼ阻害薬、αGI)を紹介しよう。甘いお菓子を食べる直前に服用すると、血糖の急上昇をやや抑えられる。誤解なきように、糖質を控えず本薬を飲めばよいと推奨しているワケではない。利点もあれば弱点もある。消化吸収が邪魔されるため、腸管内にガスが発生してお腹が膨れたり、オナラが出たりすることも。 最近の研究で、本薬が心臓や血管など動脈硬化を抑える効果があると判明してきた。一因として、腸内細菌の働きによって発生した「水素」がプラスの効果を担っているという。まだ、確固たる証拠はないのだが、今後の研究の進展を待ちたい。 ◆水素をふくむ水 近年、統合医療の意義が高まっている。難しそうな言葉だが、私たちが通常お世話になっている西洋医療(Western Medicine)と補完代替医療(Complementary and Alternative Medicine, CAM)とをあわせて、統合医療(Integrative Medicine, IM)と呼んでいる。関連語として、数学で使う積分記号インテグラル「∫」とか、統合型リゾート(Integrated Resort、IR)なども。あらゆる施術や薬や食物や飲料など、医学・医療・健康領域をカバーしている。 この中で、最近注目されているのが「水素水」である。生体内の水素濃度増加が様々な病態に有効であるようだ。スポーツジムなどにある水素水についても、薬理学効果が報告されている。これも、今後の研究の蓄積を期待したい。 ◆いろんな臨床応用 ある有名女優の披露宴の引き出物のエピソードがあり、水素風呂(水素バス)に効果があるとされる。調べてみると2タイプあり、試すには「入浴剤タイプ」が、長期には「水素発生器」が推奨されるという。よく汗が出て、肌がツルツルになり、リラックスし、熟眠でき、体調がよいという声があるようだ。 一般に、酸素カプセルとか酸素ボンベなどと呼ばれているが、空気中の酸素濃度が通常あるいは高い場合など、いろいろな状況がみられる。また、水素濃度を高めた空気を吸う方法として、水素ボトルなども応用されている。 以上のように、水素にかかわるいろいろな臨床応用が進んできた。少なくとも、その効果の一部は、活性酸素の作用に対する水素の抗酸化力によるものと推測される。図のように有害な活性酸素を打ち消す意味合いだ。しかし、これらには多くのファクターが関わっており、今後研究の積み重ねによって詳細なメカニズムも明らかになってくるであろう。 (板東浩、医学博士、ピアニスト、https://www.pianomed.org/) 印刷用PDF