7月11日(土)から、近代美術館で「言葉」をテーマにした展覧会が始まります。その名も「言葉を観る、美術を読む」。本来、言葉は「読む」もの、美術は「観る」ものです。しかし今回は、美術作品の一部となっている言葉を観たり、言葉を手がかりに作品の背景を読んだりしてみてほしい、という思いを込めて、このようなタイトルになっています。
ところで皆様は、「言葉と美術」と聞いて何を想像するでしょうか。答えは人によって様々でしょうが、絵本や、挿絵付の本を思い浮かべる人が多いかもしれません。
本展覧会の導入では、「サイン」について紹介していますが、これも多くの人にとって身近な例だといえるでしょう。一方で、「言葉と美術」と聞いて真っ先にサインを挙げる人は、多くはないかもしれません。つまりサインは、よく目にするけれども、普段はあまり気に留められない言葉であるともいえます。今回はそんなサインの中でも、個性的なものを取り上げています。サインの書き方一つを取っても、作家なりの工夫があり、作品の表現と同様、サインそれ自体も興味深いものだと気付いてもらえるはずです。

椿貞雄〈弟茂雄像〉 1915年 徳島県立近代美術館蔵
サインの次に紹介しているのは、同じように「人の名前が作品に記されている」という状況ではあるものの、全く異なる役割が与えられている言葉です。ただ人の名前を記しているだけでも、そこには様々な思いが込められていて、作品によって言葉から受ける印象は大きく異なります。

ヴァシリー・カンディンスキー「版画集〈響き〉5.「叙情的」 1911年 徳島県立近代美術館蔵
その他にも、響きやリズムといった言葉の音に関する部分だけを取り出して、美術の色や形と調和させている作品もあれば、文字が記されているわけではないけれど、描かれている人物の動作から、言葉を書いたり読んだりしていることが分かる作品もあります。言葉は必ずしも、目に見える形で現れるとは限らないのです。一方で、文字として書かれてはいるけれど、本来の意味からは離れ、ただの記号として、別の役割を負わされている言葉もあります。目に見える形で書かれていても、普通の言葉として使われているわけではない場合もあるということです。このように、一口に言葉といっても、その形や役割は、作品によって大きく異なります。
言葉は、意味が重要だったり、意味から離れたりしますし、文字だったり、目には見えない形だったりもします。そうした多様な姿は、美術との関わりの中に留まるものではなく、日常でも見られるものでしょう。会場を出た後、皆様も身の回りの言葉が気になってしまうようになるかもしれません。
その他、現代版画のコーナーでは、「絵をみて、そうぞう きこえる音は?」というテーマで、版画作品に登場する「音」に着目した展示を行います。また展示室2では、伊原宇三郎と清原重以知という、徳島出身の二人の画家に焦点を当てて、彼らの作風の変化について見ていきます。
そして今回は、開幕初日の14時から、さっそく展示解説を行います。準備や展示作業を終えたばかりだからこその、新鮮な感覚をお届けできればと思っておりますので、ぜひお越しください。
(徳島県立近代美術館学芸員 井手迫 蒼)
徳島県立近代美術館の7月の催し物
〔展覧会〕
■「「原安三郎コレクション 北斎×広重」
7月25日(土)~9月23日(水・祝)
「原安三郎コレクション 北斎×広重」展特設サイト
https://www.jrt.co.jp/jrtweb/hokusaihiroshige/
〔展覧会〕
■「所蔵作品展「2026年度Ⅱ「言葉を観る、美術を読む」
7月11日(土)~9月30日(水)
【関連イベント】
・学芸員による展示解説
とき:2026年7月11日(土)14時00分~14時45分
ところ:徳島県立近代美術館 展示室1,2
講師:井手迫蒼(学芸員)
参加対象:どなたでも
料金:要観覧券
申込方法:申込不要
おやこ鑑賞ツアー
7月20日[月・祝]11時-11時30分
進行:美術館スタッフ
対象:幼児・小学生と保護者(2階美術館ロビー集合) 申込不要 無料
※美術館ホームページもご参照ください。
https://art.bunmori.tokushima.jp/
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