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中央テレビ編集 


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美術館からのエッセイ
特集展示「没後5周年 菊畑茂久馬展」
 本展は、福岡を拠点に戦後日本の前衛美術を牽引した徳島ゆかりの作家、菊畑茂久馬(1935~2020)が没してから5年の節目を迎えるに当たり、全国の美術館が、自館が所蔵する菊畑の作品を展示する「LINKS-菊畑茂久馬」プロジェクトの一環として開催しています。
 菊畑は、徳島県海部郡由岐町(現・美波町)出身の父親と、長崎県五島市出身の母親の間に生まれました。幼い頃から絵画を好み、1957年に福岡の前衛美術集団「九州派」に加わり、60年代の反芸術運動の旗手として頭角を現します。活動初期に手がけた〈奴隷系図-円鏡による〉シリーズ (写真1)は、丸型に成形した物体を赤や黒色の塗料で彩色し、その面に歯医者からもらい受けたという歯を取り付けたり、一部に焦げ跡を残した作品です。  


(写真1)菊畑茂久馬〈奴隷系図-円鏡によるNo.12〉1962年      

 若くして中央のアートシーンに華々しくデビューした菊畑でしたが、1964年の東京オリンピック、70年の大阪万博に沸き立ち、その喧騒へとなだれ込む日本の文化状況を憂いて、60~80年代初頭まで十余年もの間、公に作品を発表する機会を極端に減らし、美術界と距離を置くようになります。この“沈黙”の時期に、菊畑は自身の作品に用いてきた「もの」をどのように平面の絵画へと取り込むかという問題意識の下、日常的な素材を組み合わせたオブジェの制作に着手します。そして、それらのオブジェを平面化する試みとして、版画に取り組みました。さらに1980年代以降、キャンバスに棒状の物体を取り付け、表面を絵具で塗り込めた〈天動説〉(写真2)をはじめ、〈月光〉、〈月宮〉など大型作品のシリーズを発表していきます。  


(写真2)菊畑茂久馬〈天動説 十一〉1985-87年

 本展では、気鋭の美術家として将来を嘱望されながらも制作の現場から遠ざかり、オブジェの制作を通して「もの」と向き合い、重厚な大型作品のシリーズを生み出すに至った作家の足跡を、1960-80年代にかけて制作された当館の所蔵作品によって振り返ります。

(徳島県立近代美術館 主任 三宅 翔士)


徳島県立近代美術館の2月の催し物

所蔵作品展2025年度Ⅱ「空間往来」
2025年12月6日(土)-2026年4月5日(日)

特集展示「没後5周年 菊畑茂久馬展」
2026年1月24日(土)-2月15日(日)

■関連イベント

所蔵作品展2025年度Ⅱ「空間往来」
2025年12月6日(土)-2026年4月5日(日)

・こども鑑賞クラブ+
2月28日[土]14時-14時45分
進行:美術館スタッフ
対象:小学生 美術館ロビーに集合
定員30名程度 電話、メール申込(当日参加可)
無料(保護者は要観覧券)

・展示解説 2月23日[月・祝] 14時-14時45分
講師:久米千裕(主任学芸員)
申込不要 展示室1、2

特集展示「没後5周年 菊畑茂久馬展」
2026年1月24日(土)-2月15日(日)

・展示解説
2月14日[土] 10時30分-11時
講師:三宅翔士(主任)
申込不要 要観覧券
展示室3