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中央テレビ編集 


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美術館からのエッセイ
所蔵作品展Ⅰ「徳島のたからもの」
 近代美術館で6日から始まる所蔵作品展2025年度Ⅰでは、開館35周年を記念し、「徳島のたからもの」と題して、日本の洋画草創期に活動した原鵬雲や守住勇魚、西洋の伝統的な絵画理論と技法を学び、端正で古典的な裸婦像を描いた伊原宇三郎、戦後日本の前衛美術をリードした山下菊二の他、日本に水彩画を広めた三宅克己、大正期の個性派として活躍した廣島晃甫など、日本近代美術史に大きな足跡を残した徳島出身の作家たちの作品を中心に紹介します。また「描かれた徳島」、「戦後80年-画家と戦争」「珠玉の海外美術」のテーマにより、様々な視点からコレクションの魅力に迫ります(「珠玉の海外美術」の展示期間は10月15日-11月30日)。
 「戦後80年-画家と戦争」では、徳島の画家たちが戦争とどのように向き合ったのか振り返ります。戦時中、国家が主催する帝国美術院展の中堅作家であった伊原宇三郎は、軍の用命を受けて戦地に赴き、数多くの戦争画を手がけました。中国戦線に取材した〈汾河(ふんが)を護る(夜は不眠の警備)〉(第2回文部省美術展覧会出品作)(写真1)は、伊原が中国の山西省で夜間の攻撃に備え昼寝する警備兵に取材した作品です。このように国策に沿う形で戦争画を描いた伊原の他、シュルレアリスムの新進作家として活躍しながら戦争によって画業を断たれた森堯之などの作品も合わせて紹介します。  
 「珠玉の海外美術」では、20世紀美術の主要な動向に沿って活躍した作家たちの名品を紹介します。 パブロ・ピカソは、描く対象を多視点から捉え直すキュビスムの手法を用いた先駆者です。今回は彼の恋人で、シュルレアリストでもあったドラ・マールの肖像画や、マン・レイが撮影した肖像写真など関連作品も合わせて展示します。
 この他、1950年代以降、大量生産・消費社会の到来を背景に、雑誌や広告など身近な素材をモチーフにした制作で注目を浴びたポップ・アートの作家、アンディ・ウォーホルやデイヴィッド・ホックニーの作品や、幼少期にホロコーストを経験し、その痛みをペンディングナイフで刻印したユダヤ人の作家、ローズマリー・コーツィーの大作(写真2)など、当館が所蔵する珠玉の名品をお楽しみください。


(写真1)伊原宇三郎〈汾河を護る(夜は不眠の警備)〉1938年



(写真2)ローズマリー・コーツィー〈(題名なし)〉1983年


(徳島県立近代美術館 主任 三宅 翔士


徳島県立近代美術館の10月の催し物

大阪・関西万博特別連動企画「浮世絵の華-原安三郎コレクション-」
9月6日(土)-10月13日(月・祝)

開館35周年記念展「美術と野獣-人間の根源へ」
10月4日(土)-12月14日(日)

■関連イベント

所蔵作品展2025度Ⅰ「徳島のたからもの」 
9月6日(土)-11月30日(日)

・こども鑑賞クラブ+
10月25日[土]14時-14時45分
進行:美術館スタッフ
対象:小学生 美術館ロビーに集合
定員30名程度 電話申込(当日参加可)
無料(保護者は要観覧券)

・展示解説
10月26日[日] 14時-14時45分
講師:三宅翔士(主任)
申込不要 要観覧券
展示室1、2

開館35周年記念展「美術と野獣-人間の根源へ」
10月4日(土)-12月14日(日)

・学芸員による展示解説
10月5日[日] 14時-14時45分
講師:浅田真珠(学芸員)
申込不要 要観覧券
展示室3

・こども鑑賞クラブラボ
10月25日[土]15時-16時30分
進行:美術館スタッフ
対象:中学生-大学生 美術館ロビーに集合
定員10名程度 電話申込(当日参加可)
無料