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中央テレビ編集 


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美術館からのエッセイ
開館35周年記念展
「キミに夢中♡~学芸員のおしごとと愛しき人間像コレクション~」
 徳島県立近代美術館では、4月26日(土)から開館35周年記念展「キミに夢中♡~学芸員のおしごとと愛しき人間像コレクション~」を開催します。
 本展では、当館が誇る「人間像コレクション」を愛しい「キミ」と呼ぶことにします。そして、一般的に学芸員の仕事として挙げられる「収集」「保存」「調査研究」「展示」「教育普及」の5つの章を設け、仕事のなかで発見したことやエピソードなどと共に「キミ」の魅力をご紹介します。
 今回は、「収集」「保存」「調査研究」の章で展示される作品について簡単にご紹介します。

■収集
 まずご覧いただくのが「収集」の章です。当館の収集活動が始まって40年が経ちます。昨年度までに収集されたコレクションの総数は10,000点(二次資料を含む)を超えるまでになりました。この章では、当館の代名詞とも言えるパブロ・ピカソの〈ドラ・マールの肖像〉から、去年度収蔵された作品までを、おおよその収蔵年順に並べてご紹介し、当館における収集活動の変遷を概観します。
 新収蔵作品の村上早〈嫉妬-どく-〉は、徳島では初公開となります。村上の私的な体験をテーマとしながらも、その域を超え、現代人が抱える生きづらさの問題にそっと寄り添ってくれるような作品です。


村上早〈嫉妬-どく-〉2020年 当館蔵
(展示期間:4月26日~6月29日)


■保存
 「保存」の章では、美術館における作品保存の工夫や、近年修復された作品についてご紹介します。美術館の大きな役割に作品の「保存」と「活用」があります。展示公開をせず収蔵庫の中に安置しておけば作品の劣化などを抑制することができますが、みなさんに見てもらうことができません。作品を良い状態で後世に残すため、学芸員たちは日々「保存」と「活用」のジレンマを抱えながら作品とつきあっています。
 ここでは、近年修復された作品として、山下菊二の〈憑憑(ひょうひょう)CUBA〉を展示します。作品の修復を行う際は、入念な調査を行い、修復家の方と協力しながら作業を進めます。修復前の本作は画面に山下が飼っていたとされる鳥の糞が付着していました。そのような特殊な状態の作品における修復とは?ぜひ、会場でお確かめください。


山下菊二〈憑憑CUBA〉1968年 当館蔵


■調査研究
 「調査研究」は学芸員の仕事の基本です。具体的には、作品や作家に関する資料を読んだり、作品をすみずみまで観察したりします。また、作家や遺族から直接お話を伺ったりすることもあります。そうした地道な努力があって、展覧会企画や論文、作品収集に結びつくのです。
 研究の仕事の中でも、所蔵作品や作家についての調査研究はとりわけ重要です。展覧会や毎年刊行される研究紀要などにおいて、その成果をまとめています。この章では、石丸一や伊原宇三郎など、徳島ゆかり作家による作品を中心に展示します。


伊原宇三郎〈二人〉1930年 当館蔵


 本展では、選りすぐりの作品約140点を、すべての展示室を使用して一堂に展示します。きっとあなたが夢中になる「キミ」にも出会えるはずです。

(徳島県立近代美術館 学芸員 久米 千裕)


徳島県立近代美術館4月の催し物

■展覧会情報
開館35周年記念展「キミに夢中♡~学芸員のおしごとと愛しき人間像コレクション~」
2025年4月26日(土)~8月31日(日)

【関連イベント】
・「おやこ鑑賞ツアー」4月29日(火・祝) 11:00~11:30
 ところ 近代美術館 展示室1
 講師 近代美術館学芸員
 参加対象 幼児・小学生と保護者
 参加費用 無料
 申込方法 申込不要
 その他 集合場所:近代美術館ロビー(2階)