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中央テレビ編集 


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美術館からのエッセイ
特集展示「アートにタッチ!展」
手のひらでこんにちは
 美術作品は見て味わうように作られています。触ることで新しい発見があるかもしれません。この展覧会は、手の感覚と心の想像力でアートを鑑賞する提案です。  
 会場は2つのパートで構成されます。最初のコーナーはゲーム仕立てで、指先や手のひらの感覚に集中してみます。箱の中にあるものを目を使わず手で確かめてみると、意外に難しいことが実感できます。  
 続くコーナーで、本館所蔵の彫刻作品を触って鑑賞します。まずはウェットティッシュで手をふいて、指輪や腕時計はポケットに。手の脂分による汚れや、作品にすり傷がつかないようにするための準備です。ぜひご理解いただいて、あまり機会が多くはない触る鑑賞を楽しんでもらえたらと思います。  
 コツは、やさしく、ゆっくり触ること。手のひらで大きく形をつかんで、指先で細かいところをチェックするなど、色々な触り方を試してみるのがよさそうです。そして、すぐことばにできない感じも大切に味わうことをおすすめしたいと思っています。  
 一つ目の作品、黒川弘毅さんの〈Golem 63〉は、神が大地から命を生み出す前の、まだ形のないものという意味の言葉「ゴーレム」がタイトルになっています。その言葉のとおり、作者は見える形を彫刻に写すのではなく、手探りで生まれてくる形を指先でたどり、制作しました。その不思議な形を目をつむって触っていくと、どこでも見たことがないような、新鮮な印象が胸にわきおこってきそうです。そんなどきどきを、すぐに言葉に置きかえるよりは、身体で感じることに気持ちを向けてみてはいかがでしょうか。それこそが、彫刻ならではのもう一つの鑑賞方法といえるかもしれません。  
 会場では他にも、人をテーマにした作品や、大きな石の門をかたどったものなど全部で6点の作品を触って鑑賞していただけます。  
 手のひらであいさつをするように彫刻と出合ってみませんか。「私は彫刻にこんにちは、て言ってから、さわらせてもらいます」とは、当館で触る鑑賞をした人のことばです。すてきですね。ようこそ、おもしろい「タッチ」の世界へ。

(徳島県立近代美術館 学芸交流担当課長 竹内 利夫)



黒川弘毅〈Golem 63〉1991年



荻原守衛〈労働者〉1909年



徳島県立近代美術館3月の催し物

◆特集展示「アートにタッチ!展」開催中~3月16日(日)
◆所蔵作品展2024年度Ⅲ「“Z”と呼ばれる時代」開催中~4月20日(日)
◆てみるの時間2024年度プレ事業「窓ガラスプロジェクト」(徳島県立二十一世紀館との共催) 展示部門:開催中~3月9日(日) 会場:徳島県立近代美術館及び徳島県立二十一世紀館内 主な窓ガラス(計6会場)

〔アートにタッチ!展関連イベント〕
◆彫刻タッチ入門「手のひらでこんにちは」 3月9日[日] 14時-16時 講師:庄﨑隆志
◆入門ツアー「タッチの手ほどき」
3月1日(土)、2日(日) 14時-15時
15日(土)、16日(日) 15時-16時
進行:美術館スタッフ+アートイベントサポーター
いずれも会場は展覧会場。要観覧券。定員20人程度。電話、FAX、メールで申込。先着順で受け付けます。

〔所蔵作品展 関連イベント〕
◆Z世代学芸員によるおしゃべり解説 3月16日(日) 14時-15時

〔コラボ企画〕
◆N*CAPコレクション2025~オシャレにへんしん!~ 3月2日(日) 13時30分-16時
講師:N*CAP(鳴門教育大学子ども向け美術ワークショップサークル)
電話、FAX、メールで申込。先着順で受け付けます。