HOME > 連載コラム

中央テレビ編集 


<< 先月のコラムへ    トップへ    >> 次月のコラムへ

美術館からのエッセイ
2・3月の近代美術館は催しが目白押し
 徳島県立近代美術館では、所蔵作品展 2023年度Ⅲ「物語をさがしに」を2024年4月7日まで開催中です。昔から語り継がれてきた物語や、作者の心の中にある個人的な物語などを表現した作品を展示しています。

 
桂ゆき〈さる・かに合戦〉 1948年 徳島県立近代美術館蔵

■所蔵作品展って?
 所蔵作品展あるいは常設展と聞くと、いつも同じ作品が並んでいると想像される方が少なくないかもしれません。当館の所蔵作品展では約4ヶ月の会期で入れ替えながら作品を展示しています。一度訪れた方も、数か月後に来たときには異なる所蔵作品に出会えるというわけです。
 では、所蔵作品とはどのようなものでしょう。そもそも美術館や博物館は資料(美術館の場合は主に美術作品)を収集し保存するという機能を持っています。各館はそれぞれの収集方針に沿って資料を収集しています。購入や寄贈などによって作品を取得し、コレクションを充実させていくのです。当館の場合は開館前から現在まで継続して収集活動をおこなっていますので、所蔵作品は数千点にのぼります。展示室の中に一度に展示できる数は限られていますので、定期的に作品を入れ替えながら様々な作品の鑑賞機会を提供しているのです。

■美術館の催しは何のため?
 所蔵作品展は担当学芸員が毎回工夫を凝らして構成していますので、いつお越しいただいても楽しめるはずです。ただ、何かきっかけがないと出かける気持ちになりにくいですよね。そんなときは、気になる催しのタイミングでお越しになってはいかがでしょう。所蔵作品展 2023年度Ⅲ「物語をさがしに」の会期中にあたる2024年2・3月にはたくさんの催しを予定しています。
 これらの催しは美術館の教育普及事業として位置づけています。その目的は、作品鑑賞をより豊かにすること。「どのように作品を鑑賞したらいいのかわからない」、「美術館に行くのが好きだからさらに楽しみたい」、「こどもたちに美術に触れてほしい」といった様々な声にできるだけ応えたいと考えながら、催しを準備しています。

■どの催しが自分にぴったり?
 たくさんの催しがあると、どれに参加したらいいか迷ってしまうかもしれません。今回はみなさんの興味や関心に合わせて、どんな催しがあるのか紹介します。

・楽しく美術鑑賞してみたい方へ
 「作品を鑑賞するって言ってもどうすればいいの?」「気軽に楽しく参加できるイベントはないかな」。そんなみなさんには、リラックスしながら所蔵作品展を鑑賞する「ゆるゆるおしゃべり鑑賞会」はいかがでしょう。展示室内に設置したカーペットや椅子に座って、作品をながめてのんびりと自由に楽しくおしゃべりしましょう。
 こどもも大人も参加できるワークショップ「ヤッピーネの宝もの」は、美術館に住むいたずらな妖精ヤッピーネの宝ものを手がかりに、作品を鑑賞するプログラムです。美術館デビューの方も歓迎いたします。

 
ヤッピーネが宝ものを集めているトランク。中身は当日のお楽しみです。

・描いたり作ったりするのが好きなこどもたち・元こどもたちへ
 こども鑑賞クラブ「お絵かきすきすぎ」は、小学生対象の恒例イベント。クイズをしたり絵を描いたりしながら、学芸員といっしょに展覧会を楽しんで鑑賞します。
 小学校高学年以上対象の「半分彫刻ワークショップ」と小学生対象の「半分なんだ?粘土でつくろう」は、半分になった身の回りの食べ物や道具の残り半分の形を粘土で作るワークショップです。何かを作ってみたい気持ちは年齢を問わずあるはず。こどもも、かつてはこどもだったみなさんも楽しく創作してみましょう。

・所蔵作品や作家についてもっと知りたい方へ
 作品を見ていると、もっと詳しく知りたいと思うこともあるでしょう。定番の「学芸員による展示解説」では、展示室で作品を前にしながら解説します。今回は「物語」をテーマにした作品を紹介します。
 さらに掘り下げた話を聞きたい方には美術館講座がおすすめです。美術館講座「徳島の作家に気づかされたこと-伊原宇三郎と山下菊二」では、日本近代美術史に大きな足跡を残した2人の徳島の画家、伊原宇三郎と山下菊二を手がかりに、絵画の意味や可能性について考えます。もうひとつの美術館講座「徳島で生まれた水彩画 ・アマチュア写真の開拓者-三宅克己の生涯について」では、明治生まれで、水彩画の先駆者でありアマチュア写真の分野でも活躍した三宅克己をスライドで紹介し、展示中の作品も見学します。

・色々なイベントを一気に楽しみたい方へ
 近代美術館は六つの文化施設(図書館、博物館、鳥居龍蔵記念博物館、近代美術館、文書館、二十一世紀館)が一堂に会した総合公園、文化の森の一員です。その文化の森全体でおこなう「文化の森 ウィンターフェスティバル」では、各館を巡るクイズラリーやワークショップ、ツアーなどが開催されるので、色々な館を体験してみたい方にぴったりです。

 
文化の森外観。建物の左側が近代美術館ゾーンです。
 
 参加してみたい催しは見つかりましたか。もちろん、自分のペースで自由に所蔵作品展をお楽しみいただくのも歓迎しています。美術館は誰もが訪れることのできる場所です。みなさん自身の過ごし方を見つけてみてください。

(徳島県立近代美術館 主任学芸員 笠井 優)


■展覧会情報
 所蔵作品展2023年度 III「物語をさがしに」
開催中~2024年4月7日(日)近代美術館 展示室1、2 *観覧料が必要です。

【フリースペース チャレンジとくしま芸術祭2024 ザ・ファイナル】
展示部門
2024年 1月 23日 (火) ~ 2月4日 (日) 9時30分~17時 (4日は 16時まで)
近代美術館 展示室 3

受賞者発表会  2024年3月9日(土)、10日(日)
近代美術館 展示室3、二十一世紀館イベントホール
*いずれも観覧無料

【2024年2・3月の催し物】
・ゆるゆるおしゃべり鑑賞会
とき:2024年2月3日(土)14時~14時30分
ところ:近代美術館 展示室1  講師:近代美術館スタッフ
参加対象:どなたでも 料金:要観覧券 
定員:10人、申込不要

・ワークショップ「ヤッピーネの宝もの」
とき:2024年3月24日(日)10時30分~12時
ところ:近代美術館 展示室1、2 講師:近代美術館スタッフ
参加対象:どなたでも 料金:要観覧券
定員:10人 電話で申込(先着順)。定員に余裕があれば、当日参加も可。

・こども鑑賞クラブ「お絵かきすきすぎ」
とき:2024年3月9日(土)14時~14時45分
ところ:近代美術館 展示室1、2 講師:近代美術館スタッフ
参加対象:小学生(保護者同伴可) 料金:無料(保護者は要観覧券)
定員:30人程度、電話で申込。先着順で受け付けます。

・半分彫刻ワークショップ
とき:2024年3月17日(日)13時~15時30分
ところ:近代美術館 アトリエ2 講師:近代美術館スタッフ
参加対象:小学校高学年以上 料金:無料
定員:10人 電話で申込(先着順)。定員に余裕があれば、当日参加も可。

・ワークショップ 半分なんだ?粘土でつくろう
とき:2024年3月30日(土)13時~15時30分
ところ:近代美術館 アトリエ2 講師:近代美術館スタッフ
参加対象:小学生 料金:無料
定員:10人 電話で申込(先着順)。定員に余裕があれば、当日参加も可。

・学芸員による展示解説
とき:2024年2月10日(土)14時~14時45分
ところ:近代美術館 展示室1、2  講師:宮﨑晴子(当館主任学芸員)
参加対象:どなたでも 料金:要観覧券 申込不要

・美術館講座「徳島の作家に気づかされたこと-伊原宇三郎と山下菊二」
とき:2024年3月16日(土)14時~15時30分
ところ:近代美術館 講座室 講師:江川佳秀(当館学芸員・主席)
参加対象:高校生以上 料金:無料
定員:30人程度、申込不要

・美術館講座「徳島で生まれた水彩画 ・アマチュア写真の開拓者-三宅克己の生涯について」
とき:2024年3月20日(水・祝)14時~15時30分
ところ:近代美術館 講座室 講師:森芳功(当館学芸員・主席)
参加対象:高校生以上 料金:無料
定員:30人程度 申込不要

・文化の森 ウィンターフェスティバル
とき:2024年2月11日(日・祝)9時30分~16時 *当日は所蔵作品展無料

*申込先はいずれも徳島県立近代美術館 TEL:088-668-1088
お電話にて、参加希望のイベント名とお名前、当日連絡先をお伝えのうえお申込みください。

※美術館ホームページもご参照ください。
https://art.bunmori.tokushima.jp/