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中央テレビ編集 


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美術館からのエッセイ
特別展「ディーン・ボーエン展 オーストラリアの大地と空とそこに生きる私たち」
会期:9月16日(土)~12月10日(日)
 皆さんは、「オーストラリア」といえば何を思い浮かべますか?

 コアラやカンガルーなどの動物たち、先住民のアボリジニでしょうか。それとも、グレート・バリア・リーフやウルルなどの雄大な自然でしょうか。あるいは、発展したシドニーの街並みやオペラハウスをイメージする方もいらっしゃるかもしれません。

 このような独自の風土と文化を持つオーストラリアという国で活躍する一人のアーティストがいます。

 彼の名は、ディーン・ボーエン(Dean Bowen, 1957- )。

 メルボルンを拠点に、版画、油彩画、水彩画、ブロンズ彫刻、廃材によるアサンブラージュなど、様々なジャンルの作品を制作しています。オーストラリアの自然や都市、そこに生きる人間や動物などを、チャーミングで心温まる作風で表現しています。


 おやおや? 
 ボーエンの作品によく登場するオーストラリア固有の動物ハリモグラとワライカワセミが、ボーエンについて何やらおしゃべりしているようです。


図1 《ハリモグラと仲良しのワライカワセミ》Echidna with Friendly Kookaburra 2022年 ブロンズ 作家蔵 Collection of the artist

ワライカワセミ
「ボーエンさんの髪型って、君たちハリモグラに本当にそっくりだよね!」

ハリモグラ
「そうそう!ぼくたちの身体に生えてるハリみたいにツンツン逆立ってるよね。ボーエンさんは自分のおばあちゃんに、ハリモグラみたいな髪だねって言われたこともあったみたい。それ以来、ハリモグラを自分のアイコンにしていて、頭にハリモグラをのせた自分の姿の彫刻も作っているんだ。(図2)」


図2 《ぼくの頭にのるハリモグラ》Echidna on my Head 2006年 ブロンズ 作家蔵 Collection of the artist

ワライカワセミ
「ボーエンさんは、ハリモグラだけじゃなくて、ぼくらワライカワセミやコアラ、ウォンバットなど、いろいろな動物の作品を作っているよね。」

ハリモグラ
「そうだね!みんなまん丸の身体やつぶらな瞳をしていて、とっても可愛い!(図3、図4)」


図3 《おとなしいペンギン》Passive Penguin 2010年 油彩、カンヴァス 作家蔵 Collection of the artist


図4 《コアラ》Koala 2020年 ブロンズ 作家蔵 Collection of the artist

ワライカワセミ
「動物以外にも、ボーエンさんは人間をよく描いているね。(図5)顔が画面いっぱいに描かれているのが特徴的だね。」


図5 《テクトニック・ヘッド》Tectonic Head 2002年  エッチング、アクアティント、ドライポイント、紙  ギャルリー宮脇蔵 Collection Galerie Miyawaki, Kyoto

ハリモグラ
「顔の表面は、赤茶色や黄土色を使っていて、ゴツゴツ、ザラザラとした質感だね。人の顔を描いていると同時に、オーストラリアの大地の表面を表しているんだって。」

ワライカワセミ
「大地だけじゃなくて、オーストラリアの町の風景を描いた作品もあるね。(図6)ぼくたち鳥のような目線から見下ろすように描いているよ。家も道路も自動車も、奥行きがなくて平面的だよね。子供が描いたみたいな絵だ!」


図6 《町の眺め》City View 2004年 油彩、カンヴァス 作家蔵 Collection of the artist

ハリモグラ
「ボーエンさんは、アボリジニのような先住民たちの美術(プリミティヴ・アート)やアール・ブリュット(生の芸術)など、伝統的な美術の枠を超えた、純粋で無邪気な表現を愛しているんだ。」

ワライカワセミ
「絵画や彫刻の他に、ガラクタを使ったアサンブラージュも作っているよ。(図7)ボーエンさんが、自由に楽しく制作していることがよく分かるね。」


図7 《オレンジ・ドッグ(ハアハア喘ぐ)》The Orange Dog(Pant) 2018年 アサンブラージュ(着色した木、鉄、ほか) 作家蔵 Collection of the artist

ハリモグラ
「ボーエンさんのおおらかな心と、この世界に生きる全てのものへの深い愛が、一つ一つの作品に込められているね。ボーエンさんのような素敵なアーティストが、ぼくたちハリモグラのことをアイコンにしてくれていて本当にうれしいなあ!!」

 ハリモグラとワライカワセミが話していたように、ボーエン作品はたくさんの魅力にあふれています。
  本展は、日本初の本格的なボーエン展です!彼の多彩な創作活動を約150点の作品でご紹介します。ボーエン作品を心ゆくまで堪能できるまたとない機会です。展覧会に加えて、関連イベントも多数企画しています。
  今年の秋冬は徳島県立近代美術館で、ディーン・ボーエンのユーモアに満ちた世界を一緒に楽しみましょう!皆様のご来館を心よりお待ちしております。

(徳島県立近代美術館 学芸員 浅田 真珠)


徳島県立近代美術館9月の催し物

■展覧会情報
〇特別展「イロのひみつ―なにいろに見る?」  
 開催中~9月3日(日)
 【関連イベント】
 ・音楽と色彩のワークショップ  
  9月3日(日) 14時~16時30分

〇特別展「ディーン・ボーエン展 オーストラリアの大地と空とそこに生きる私たち」
 9月16日(土)~12月10日(日)
 【関連イベント】  
 ・学芸員の見どころ解説
  9月23日(土・祝) 14時~15時
 ・土曜ワークショップ ディーン・ボーエン探検隊
  美術×防災「歩いてつくろう!~ハリモグラの視点から~」
  9月30日(土) 10時~15時
 ・フォトコーナー「オーストラリアへGO!」
  会期中 近代美術館ロビー  
 ※詳しくは、HPをご覧ください。https://art.bunmori.tokushima.jp/bowen

〇所蔵作品展「2023年度Ⅱ 祈りと幻想」  
 開催中~11月26日(日)
 ※詳しくは、HPをご覧ください。https://art.bunmori.tokushima.jp