中央テレビ編集 << 先月のコラムへ トップへ >> 次月のコラムへ 美術館からのエッセイ 徳島県立近代美術館 所蔵作品展 2023年度 Ⅰ「人のよそおい」 4月15日(土)から始まる「所蔵作品展 2023年度 Ⅰ」では、「よそおい(装い、粧い)」をテーマに「見ること/見られること」「時代を映すよそおい」「不思議なよそおい」「華やかなよそおい」の視点から作品をご紹介します。 太郎千恵蔵の〈プリンセス・パーティー I〉を見てみましょう。赤やピンクなどの子供用ワンピースが自立し、下部にはモーター付きの台車が付いています。この作品における重要なポイントは、ブランド品の服と、子供の身体の消失です。これらの服は、日本の親たちが自分の子供をまるでプリンセスのように飾り立てるために購入したものです。子供たちにブランドものの服を着せることは、裕福な家庭であることを他者に示すと同時に、購入することができる自分に満足するためのように思われます。しかし、皆が同じように子供を着飾った結果、一人ひとりの個性は無くなり、そこには見栄のための服だけがありました。社会のシステムによって左右される現代人の身体を象徴的に示した作品です。 太郎千恵蔵〈プリンセス・パーティー I〉1993年 ©Taro Chiezo 1993 「よそおい(装い、粧い)」は「自分らしさ」を表現する重要な要素の一つです。しかし、外に出かけ、人に会うとなると、純粋に自分が好きだと思うものを身に着けられないことがあります。TPO(タイム・プレイス・オケージョン)に気を遣ったり、「ダサい」と思われないよう流行のデザインや色を取り入れたり・・・・。私たちは他者を鏡にして身に着けるものを選んでいるのです。 私たちの身体は「見るもの」であるのと同時に「見られるもの」でもあります。インターネットとSNSの普及によって誰もが自分の外見を発信することができるようになった現代において、私たちは他人をどう見ているのでしょうか。そして、他人からどう見られたいのでしょうか。 この展示が私たちにとって日常的な行為といえる「よそおう」ことについて、見つめなおす機会になればと思います。 他にも、和装と洋装が混在する昭和初期の人々を描いた山下菊二の〈高松所見〉や、20世紀初頭パリのアートシーンで、数多くの画家のモデルをつとめた「モンパルナスのキキ」を題材にしたパブロ・ガルガーリョの〈キキ・ド・モンパルナスのマスク〉などを展示いたします。 (徳島県立近代美術館 学芸員 久米 千裕) 山下菊二〈高松所見〉1936年 パブロ・ガルガーリョ〈キキ・ド・モンパルナスのマスク〉1928年 ■展覧会情報 所蔵作品展 2023年度 Ⅰ「人のよそおい」 4月15日[土]-7月17日[月・祝] 〈関連イベント〉 ・展示解説 5月3日[水・祝]、7月9日[日]いずれも14:00-14:45 ・こども鑑賞クラブ「なに着ていこう」7月1日[土]14:00-14:45 特別展「境界をこえる」 4月29日[土・祝]-6月18日[日] 〈関連イベント〉 ・作家とつながるトーク1「河合美和 自然と自分のあいだ」 5月21日[日] 14:00-16:00 ・こども鑑賞クラブ「クラブに集まれ」 6月3日(土)14:00-14:45 ・展示解説 5月7日[日]、6月4日[日]いずれも14:00-15:00 ・手話通訳付き展示解説 6月4日[日]10:00-11:30 ・作家とつながるトーク2「林勇気 像と映像」 6月11日[日] 14:00-16:00