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中央テレビ編集 


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美術館からのエッセイ
徳島ゆかりの日本画家 幸田(こうだ)暁冶(ぎょうや)

 所蔵作品展の特設展示「徳島ゆかりの日本画家 幸田暁冶」(7月9日-9月4日)では、本館がコレクションする幸田暁冶(1925-75年)の作品10点をまとめてご覧いただきます。この機会に彼のことをご紹介いたしましょう。
 暁冶は、徳島市出身の両親の子として京都市に生まれました。父の春耕(しゅんこう)も日本画家でした。暁冶の本名は稔。京都市立美術専門学校(現・京都市立芸術大学)に学び、1950年代中頃から70年代にかけて、日展や京展などで活躍。実験的な作風と内面表現により、京都画壇の次世代を担うホープと目されました。しかし、幼い頃患った肺結核とたたかいながらの制作であり、50歳のときに没しています。  
 初期は鳥や動物たちを描きました。ただし伝統的な花鳥画ではなく、油彩用のペインティングナイフも用いた重厚な絵肌の作品。動物たちは悲しみを秘め、生きることについて静かに問いかけています。  
 その後追求した人間像では、〈リズム1〉(1965年)のように、ときにはエネルギッシュな生命感を爆発させるかのような力強さを見せます。それは病弱さからくる生へのあこがれだったのでしょう。〈花売り〉(1970年)は、死の5年前、自身の娘をモデルにして描いた作品です。真っすぐに立つ少女は、微笑みをたたえ、まるで神像のように、こちらを見つめています。  
 暁冶は生前、父とともに徳島出身の画家と見なされていました。徳島の日本画家と交流し、影響を与えたことも忘れるわけにはいきません。彼は、戦後の日本画史に足跡を残した人ですが、徳島の日本画を考えるうえでも大事な画家といえるのです。  
 なお、本展「徳島ゆかりの美術」のコーナーには、曉冶の父、幸田春耕の作品の他、三木文夫など、京都と関わりの深い日本画家の作品も展示します。合わせてお楽しみください。
                               (徳島県立近代美術館主席 学芸員 森 芳功)


幸田暁冶〈リズム1〉 1965年


幸田暁冶〈花売り〉 1970年


■徳島県立近代美術館 7月の催し

[展覧会]

・所蔵作品展「徳島のコレクション 2022年度 第2期」 79[]116[]

※特設展示「徳島ゆかりの日本画家  幸田暁冶」 79[]94[]

 

・特別展「日本の戦後彫刻」 716[]-9月4[]

 

[関連イベント]

◇所蔵作品展に関する催し

・展示解説 717[]  14時-1445分 展示室12  要観覧券

    ※本稿と関連する美術館講座(「近代の京都画壇と徳島の日本画家たち」)は、94[]に開催

 

◇「日本の戦後彫刻」展に関する催し

・展示解説 724[] 14時-15時 展示室3  要観覧券

*手話通訳や要約筆記を希望される方は、2週間前までにご相談ください。

 

・触れて考える鑑賞会 730[]  1630分-18

3階アトリエ2に集合 対象:どなたでも(視覚に障がいのある方もない方も一緒に参加できます。) 参加無料 定員10名程度 電話申込み(先着順)

 

◇こども鑑賞クラブ

・「カルタ入門」 72日[土]

・「チョウコク入門」 730日[土]

14時-1445

美術館ロビー(2階)に集合 対象:小学生(保護者 同伴可/要観覧券) 参加無料 定員15名 電話申込み(先着順)*定員を上回った場合、15時から2回目を行います。(2回目も定員15名)