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中央テレビ編集 


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美術館からのエッセイ
美術館からのエッセイ 
「フリースペース チャレンジとくしま芸術祭 2018」

◆「チャレンジとくしま芸術祭って?」
 今年も「チャレンジとくしま芸術祭」(1月16日[火]~28日[日])がやってきました。徳島発のアーティストの発見と支援を目指して平成21年度に始まり、今回で9回目となりますが、ご存じない方もいらっしゃると思います。改めてどのような催しなのかを振り返ってみましょう。
 「展示部門」と「パフォーマンス部門」の2部門で参加者を公募し、審査で受賞者が決定するコンクールです。募集内容はジャンルを問わず、展示できるものなら「展示部門」に、上演できるものなら「パフォーマンス部門」に応募することができます。応募資格は、徳島出身か在住であることのみ。実績や年齢、国籍などは全て不問。グループの場合は、メンバーの誰かが応募資格を満たしていればOKです。事前審査もなく、応募が定員を超えた時は抽選で参加者が決まります。
 「展示部門」の会場は美術館の展示室。スペースは一組当たり幅約5mの壁面です。「パフォーマンス部門」は美術館ロビーが会場。約5.2m四方の正方形のフラットな床が舞台で、上演時間は15分以内。単に作品を出品するのではなく、催しのタイトルにあるように「フリースペース」で自分の表現を自由に、総合的にプロデュースできるのが特徴です。このように制約や条件の極めて少ない芸術祭は、全国でもほとんど類を見ないものだといえるでしょう。

◆「芸術祭の精神と作品への評価」
 さて、回数を重ねてくると、ありがたいことにリピーターの方もうまれてきました。展示や上演可能ならジャンルは問わず何でも、老若男女、プロも初心者も事前審査なしに参加できる、というこの芸術祭の精神に共感して参加を続けてきた方々です。
 しかし近年、次のような感想をお聞きすることも増えてきました。
「年々レベルが高くなってきて、我々のレベルでは参加しづらくなってきた。」
「私の作品は、この芸術祭の趣旨に合ってないのでしょうか。」

「受賞はしなかったけれど」
 ローソクを一本だけ並べた人がいました。靴を出品した人がいました。藍染め作業の汚れ防止の養生用ビニールシートをぶら下げた人がいました。大麻の繊維から自分で紡いだ糸を出品した人がいました。自主制作の小冊子ZINE(ジン)を出し続けている人もいます。ドラムをたたきながら一階のエントランスから二階に上がってきた人がいました。塩ビの太いパイプを口に当てがって、うなった人がいました。アンプにつながっていないマイクで無音の一人コンサートをした人がいました。受賞はしなかったけれど、印象に残った参加者は他にもたくさんいます。
 「チャレンジ性」を評価することはたいへん難しく、審査員の間で評価が分かれることもしばしば。各部門に5名ずつの審査員の方々も、毎回、相当に苦しんでいると聞きます。そんな中、自分の作品への「反応」や審査の結果によっては、参加者の皆さんの気持ちがネガティブな方向に向かうことだってあるでしょう。そんな思いが、先ほどのような感想に反映しているのかもしれません。チャレンジを継続することの苦しさをつくづく感じます。

「勇気を後押し」
 この芸術祭は、誰でも参加できて、自由度が高いのが最大の魅力ですが、そこには、全てを自分の責任で判断し実行しなければいけない、という厳しさが伴います。さらには審査も待っている。その結果も自分自身で受け止めなければなりません。最初の一歩を踏み出す勇気もさることながら、何度も連続して応募し続ける方々の覚悟や強い気持ちには毎年心打たれます。
 「県内在住の才能ある方が沢山いるんだ…と感心しました。好きなことに集中して、夢中になれてうらやましい…」
 チャレンジ芸術祭を見に来られた方のアンケートにあった感想です。「うらやましい」と思う方の気持ちにはチャレンジする潜在的なニーズがある、と感じます。そこから一歩踏み出す勇気を、そしてそれを継続するパワーをなんとか後押ししたい。われわれ主催者のさらなる努力の必要性を痛感します。

 今年も「展示部門」には絵画、彫刻、工芸、服飾など40組、「パフォーマンス部門」には音楽、ダンス、演芸、浄瑠璃など18組の多彩な参加者が集まりました。本番に向けての追い込みの時期となる年末年始、参加者の皆さんは作品制作に、上演の稽古に余念の無い日々を過ごされたことでしょう。
 この芸術祭の様子は、後日にこの日本中央テレビでも放映予定ですが、まずは、ぜひライブでご覧になって、熱気を体感されることをおすすめします。そして展示部門の最終日(1月28日)には、両部門のグランプリほかの受賞者が発表され、3月には受賞者発表会も開催します。さて、今年はどんなチャレンジがみられるのでしょうか。お見逃しなく。
                (徳島県立近代美術館 上席学芸員 友井伸一


  
       チラシ           グランプリ 展示部門(2017     パフォーマンス部門(2017年)グランプリ      
  
               展示部門会場(2017年)                   パフォーマンス部門会場(2017年) 


特設ホームページもご参照下さい。
http://www.art.tokushima-ec.ed.jp/challenge/2018/index.html

徳島県立近代美術館 1月の催し案内

[展覧会など]
○ フリースペース チャレンジとくしま芸術祭 2018
・展示部門:2018年1月16日(火)~28日(日)※22日(月)は休館日 徳島県立近代美術館展示室3
・パフォーマンス部門:2018年1月21日(日) 徳島県立近代美術館ロビー
・受賞者発表会:2018年3月17日(土)、18日(日)*パフォーマンス部門は18日(日)のみ 
 徳島県立近代美術館ギャラリー/徳島県立二十一世紀館イベントホール

○  所蔵作品展「徳島のコレクション 2017年度第3期」特集 石丸一・島あふひ兄妹   
   開催中-4月15日(日)


[イベント]
○ ワークショップ 数学×美術でひろがる作品鑑賞-作品に潜む数学を探そう! 
1月8日(月・祝) 1回目13:00~14:00 2回目14:15~15:15
*2回とも同じ内容です。
会場:徳島県立近代美術館 展示室
講師:鳴門教育大学大学院生(「数学と芸術、そして科学間との接点を探る」の受講生
小学生以上 無料  申込み不要[各回開始時間までに2階ロビーに集合]
○ こども鑑賞クラブ「色々なチャレンジ」 *子ども対象の鑑賞ツアー
1月20日(土)14:00-14:45
会場:徳島県立近代美術館 展示室
講師:近代美術館スタッフ
小学生対象(保護者同伴可) 参加無料 申込み不要[開始時間までに2階ロビーに集合]