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中央テレビ編集 


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美術館からのエッセイ
就学前の子どもたちにアートの楽しさを届けるプロジェクト

■ はじめに
 就学前の子どもたちにアートの楽しさを届けるプロジェクト」とは、美術館を軸にした「子どもたちのアートを楽しむ活動」を県内のより広い範囲の就学前施設に広げていくことを目的に、今年度文化庁の助成をうけて実施している事業です。  
 徳島県立近代美術館は、1990年の開館以来、学校教育との連携事業に力を入れてきました。教員と連携して教材開発を行い、小学校低学年を含む各学年に応じたプログラムで、展覧会案内や出前授業に取り組んでいます。2012年からは本格的に保育所との連携がスタートしました。この活動は「アートの日」と呼ばれ、その日は当館職員が保育所に行ったり、子供たちが美術館に来たりして、様々な実践に取り組んできました。これまで、徳島市内を中心に広がってきましたが、今年度はその輪をさらに広げ共有できるよう、当館と那賀町立相生森林美術館の職員が連携して子どもたちの美術館デビューを応援したり、県内の就学前施設の先生方に呼びかけ様々な勉強会やシンポジウムを行う予定です。

■ 10月からスタートする「子どもたちの美術館デビュー応援企画」
  貸し切りバスによる美術館(徳島県立近代美術館または相生森林美術館)見学(10件)を実施し、より多くの子供たちとアートをつなぐ機会をつくります。徳島市周辺だけでなく相生森林美術館が位置する県南部でも、「美術館と就学前施設との連携」を広げていきたいと思います。

■ 保育者、教員を対象とした様々な研修会やシンポジウムの開催
 9月4日には、美術館ギャラリーで勉強会「新聞紙であそぼう」を行いました。6つのグループに分かれて新聞紙とセロテープだけを使ってタワーをつくります。高さを競い合いましたが、一番にならなかったタワーにも楽しい賞をプレゼントしました。参加者からは、「楽しかったし、協力し合うことの大切さを実感できた。」「自由な発想で仲間とアイデアを出し合い夢中になって遊ぶ楽しさを、日々の保育の中で子供たちにもたくさん経験させてあげたい。」といった感想が寄せられました。

  

 9月8日には、講師を招き、とくしま健祥会保育園の協力を得て研修会を行いました。講師の高木夏奈子先生は、植草学園大学(千葉市)で保育者・教員養成課程で音楽を教えています。この日は、参加者が、高木先生の公開保育を見学し研修しました。公開保育は、年長組の子供たちが、音楽を聴いて体で感じて、その感じたことを色や形で表現するという内容でした。
 参加者からは、「音楽と制作の活動を一緒にするというのは初めての経験でした。音楽を聴いて、楽器に触れて、体で音楽を感じて・・・という導入から自然と子どもの中に音楽が入りとても集中して制作に取り組んでいるのに驚きました。つくった作品を見るだけではなく、子どもの発言を聞くとそれぞれの思いが伝わり子どもの感性の豊かさをすごく感じることができました。園に戻りクラスでもやってみたい。」といった感想が寄せられました。

  

  

 9月20日には、「日下八光日本画展」の会場で鑑賞の研修会を行いました。展示作品の中から自分のお気に入りの作品を見つけてお互いに教え合ったり、「あたたかいで賞」、「いいにおいで賞」「ふわふわで賞」などの少し変わった賞にぴったりな作品を探したりしました。終わりに、展覧会担当学芸員から画家のこと、作品のことなどについて話を聞きました。  
 参加者からは、「日下八光さんのことを初めて知り、たくさんの素晴らしい作品を拝見できてよかったです。いろいろな方の感じ方、捉え方を知り、そのことを素直に受け止める大切さを感じました。」「他の方と一緒に絵の感想や感じたことを言い合いながら見るという楽しさを感じました。また、絵について背景などを知らずに見ると、子どもたちもこのような感じで見ているのかなあと、子どもたちの気持ちも想像することができました。」「どんな見方、意見でも受け入れてくれる環境だと、自分の思いを素直に発言できるし相手の考えもしっかり聞くことができる。絵を見る時だけでなく多くの場面でもそうなので意識していきたい。」といった感想が寄せられました。

  

■ 終わりに
 このほか、シンポジウムの開催(H31年2月16日予定)や報告書、ホームページを作成、していく予定です。「楽しい」、「私にもできる」、「子どもが成長しているのが実感できる」活動を、ホームページや報告書で紹介したいと思います。そして、今後も活動を継続し、情報を発信することで、県内の就学前施設と美術館のネットワークをひろげ、より多くの子どもたちがアートに親しむことができるような状況をつくっていきたいと思います。
                                (徳島県立近代美術館 係長 亀井幸子)

徳島県立近代美術館 10月の催し物

[展覧会]
◆特別展「日下八光日本画展-自然美の探求と知られざる画業」 開催中―11月4日(日)
◆所蔵作品展「徳島のコレクション 2018年度第2期 特集「版画は魔法?!」
 開催中―12月2日(日)

〔特別展 関連イベント〕
◆手話通訳つき展示解説 10月7日[日]10時から12時まで
◆展示解説 10月7日[日]14時から15時まで
◆日本画ワークショップ 10月20日[土]10時から16時まで
*申し込み締切は10月11日[木](申込多数の場合は抽選)
◆こども鑑賞クラブ スケッチ見にいこう!10月27日[土]14時から14時45分まで
◆日下八光を知る講座-3つの視点から10月28日[日]13時30分から16時まで

〔所蔵作品展 関連イベント〕
◆展示解説 「版画は魔法?!」10月21日[日] 14時から14時45分まで

〔その他のイベント〕
◆ゆるやか対話ギャラリー -美術を探っていくための演劇タイム-
 10月8日〔日〕13時から16時30分