其の五十

―  ゆるむ ―


  夕方の雨、止んだかな、と窓を開ける。
既に雨音はなく、代わりに虫の音。

風が部屋に入ってきた。
「あー、涼しい……」

 今夏、朝も昼も夜も、クーラーで身体の芯まで冷やされていたのが、
一気にゆるむ。

「秋や」

 布団にゴロンと横になり、手足を伸ばす。
酷暑で防御体制になっていた、身体全体をゆるませる。
すると、同時に心までもがゆるむ。

 スルスルスルスル。
夏の緊張がほどける感じがする。

 気持ちよくてウトウトしていると、ご近所から、炊き込みご飯の香りが風に乗ってやってきた。

 夏の間、ダイエットをしていた胃袋が、グーっと、ゆるんだ。