其の四十五

― 冬を捨て、春を着る ―


   
 クローゼットの前で、しばし、悩む。
コートは2週間前、セーターは10日前、ベストは1週間前から不要となった。そして2日前の午後、厚物のジャケットが暑苦しく感じ、脱いだ。
 さてと、今日は何を着るかな・・・
 テレビの天気予報で「今日は気温が上がらず、花冷えの一日になるでしょう」と言っているの聞き、冬物のジャケットを思わず手に取った ―
 
 午後、春の日差しを浴びながら街を歩く。春色を着た自分の姿がショーウィンドに映る。出かける直前、明るい春物ジャケットに変えて、やはり正解だった。肌寒いといっても、もう4月だもの。今更、冬物に戻るわけにはいかない。
「その色、とても素敵ですね、春らしくて」
馴染の店員から、そう言われ、嬉しくなる。
「でも、今日は肌寒くないですか?」
「え? あー、実はね・・・ほら。だから大丈夫」

 春色の下には、グレーの腹巻。これが暖かい。
冬を完全に捨てきれるまでには、まだしばらくかかりそうだ。