其の三十七

― ぞめきの音と ―


  阿波踊り初日、県外に暮らす兄家族と共に街へ出た。
JR徳島駅から新町橋へ。
灯された提灯の後ろに眉山を眺めながら歩いていると、阿波踊りのぞめきの音色が聞こえてきた。
心が、体が、浮き立ってくる。
 何年ぶりだろう、阿波踊りを生で見るのは。いつでも見られるからと、ここ数年は、ぞめきの音を遠くから感じるだけだった。

 通りを流れる客と踊り子、見上げると高張り提灯。
人の波に押されるように両国橋へ来ると、大小いくつもの踊りの輪が
出来ており、それを囲うように観客の渦が幾重にもなっていた。
空高く響き渡る鉦の音と大太鼓の重低音に陶酔していると、
姪と甥の姿が無い。
 何と踊りの輪に入っている!
まだ小学生にもならない子供達、踊りを習ったこともない子供達が、
二拍子のリズムに夢中になっている。
 
 目を閉じて、ぞめきに重なる
熱気とパワーを体全体で感じた。