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中央テレビ編集 


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Dr.板東のメディカルリサーチ No.202
<気象病 人や世界に 影響し>

 日本の四季といえば、季節ごとに様が移り変わり風光明媚な自然が特徴だ。しかし近年突然の雷雨等、季節感覚が乱れ、私たちの生活や健康に大きな影響を与えている。天気が微妙になると早期に体調変化を感じる人は割合多く、経験がある方も多いだろう。これらは、天気痛(Weather-related pain)または気象病(Meteoropathy)と呼ばれる。2021年11月、海外で注目されている本疾患について筆者が報告した。最近、天気痛が本邦でも話題となってきている。

◆動物は 磁気や気圧が よくわかる
 人間は哺乳類で、魚類→両生類→爬虫類→鳥類の流れで進化してきた。魚類は微妙な水圧を感じられ、鳥類は磁気を感じて方角が分かる。鳩は伝書鳩に使われるように、ずいぶん遠くからでもきちんと帰って来られる。ヒトも本来磁気や気圧を感じていたのだが、現代の生活であまり必要とされないため、その能力が使われてきていない。
 ヒトの内耳には、音を聴きバランスを保つ機能が備わっている。この形は軟体動物の「カタツムリ」とそっくり。それと同じ内耳が魚類の頭蓋骨にもあり、音波や超音波を感知できている。


◆天気痛 各種症状 持続中
 
ヒトが気圧の変化を感じるのは、耳の奥にある内耳が敏感な人。内耳がセンサーの役割を果たして、脳の中枢にある自律神経に気圧の変化を伝える。僅かな気圧の変化によって、神経系がいろいろな反応を起こすことに。すると、頭痛、めまい、肩こり、喘息、むくみ、眠気、うつ状態などの症状を生じる。
 日本の四季の特徴は、気圧変化をかなり感じられるため、天気痛は一般的といえよう。片頭痛の研究では、大気圧が1003〜1007 hPaの範囲で、わずか6〜10 hPaの減少でも、頭痛が認められた。症状や不快感などには、自己効力感など心理社会的要因なども実際には関わっている。
 これらの治療については、ストレッチや筋持久力、筋の強化などの組み合わせが推奨される。また、薬物治療として、前もって抗めまい薬を服用すると、症状の軽減が期待されている。

◆欧州で誕生 気候不安症
 最新ニュースを紹介しよう。フランスのメディアで登場した新しい用語「Éco-anxiété」であり、意味はエコ不安症、
気候不安症となる。今までになかった規模の気候変動により、不安やストレス、無力感に苦しむ状況といえよう。以前から多少、気候変動の問題を意識していたかもしれない。しかし、2022年、パリで気温40度を超え、気候災害が頻発し、環境に対する新しい心理的概念が提唱されたと思われる。
 一方、我が国の歴史を振り返ると、太古の昔から台風、噴火、地震、津波という自然の脅威と共に生きてきた。国によって環境や自然災害に対する認識も異なるようだが、温暖化や感染症を含め、世界が協力して思い切った対策が求められる時代ではないだろうか。

(板東浩、医学博士、ピアニスト、https://www.pianomed.org/

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