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中央テレビ編集 


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Dr.板東のメディカルリサーチ No.190-2
<競技者の 心のケアと ICT>

 2021年夏、東京オリンピック・パラリンピックが開催された。TV観戦しながら、心を揺さぶられたり、各選手が有するいろいろな背景に想いを馳せたり。今後の若い世代に深いメッセージが伝わったと思われる。出場者や関係者すべての方々に、衷心より敬意を表したい。

◆スポーツの 練習法が 変わる今
 東京五輪の卓球混合ダブルスでは、水谷隼/伊藤美誠ペアが、金メダルを獲得した。日本勢の五輪優勝は史上初の快挙で素晴らしい。歴史を調べると、卓球では中国勢が圧倒的な強さを誇り、五輪の金メダル計32個のうち28個を獲得しているそうだ。
 卓球はping-pongと呼ぶのだが、いま話題となっている卓球ロボット「ポンボット(Pongbot」をご存じだろうか? これには人工知能(Artificial intelligence, AI)が搭載され、その機能が凄い。素人レベルなら、相手の好みに合わせ、速度や角度、高さ、落下点を自由に設定できる。トップ選手レベルでは、スピードやスピン、軌道も瞬時に変えられるという。同国の卓球協会の重鎮や元世界チャンピオンは、この登場によって卓球コーチが不要になる可能性を示唆。さらに、「大魔王」と評される伊藤美誠(Mima)のプレースタイルを解析し、ロボットがMimaになりきったり、Mima対策のトレーニングも可能という。あなたはどう思うだろうか?

バッティング ブラストモーション 活用し
 いま世界では、陸上やバレーボール、水泳、重量挙げなどで、ICT (Information and Communication Technology)をトレーニングに活用している。たとえば、世界中が注目している大リーグの大谷翔平選手は、投球でも打撃でも動画やICTを最大限に使った。バットの動きを3次元で認識し、速度や角度などを把握できる方法をBlast Motionと呼ぶ。Blast Baseballをバットのグリップエンドに装着して実際に打つ。一球ごとにデータをチェックすると、良いバッティングに進化。このように、ICTを用いた研究と実践は、スマートアプリを活用して今後もさらに発展していくだろう。
◆各選手 メンタルヘルスに どう対応?
 現在、このようなICTの活用は確かにメリットが大きい。しかし、何か忘れていないだろうか? それはスポーツ競技者の心の側面である。過日の五輪で、2016年リオ五輪4冠・米国のバイルス選手が、心の健康を理由に途中棄権した。また、テニスの大坂なおみ選手が、アスリートと心の問題を明らかにした。この勇気ある行動がスポーツ界に一石を投じることに。今後、スポーツ界では、ICTの活用が広まるとともに、各選手への理解と対応も併せて広まってほしいと願っている。

(板東浩、医学博士、ピアニスト、https://www.pianomed.org/
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